研究課題
オートファジーとは、真核生物に高度に保存された細胞内の分解システムである。オートファジーによる分解の対象物は、オートファゴソームと呼ばれる二重膜小胞内に隔離され、リソソームあるいは液胞に輸送され、分解される。ユビキチン様タンパク質であるAtg12とAtg5の結合体は、Atg8というユビキチン様タンパク質のE2酵素であるAtg3を活性化するE3酵素活性を持ち、このE3酵素活性はオートファゴソームの形成に必須である。Atg12-Atg5によるAtg3の活性化機構を解明するため、Atg12-Atg5とAtg3の複合体の結晶構造解析に取り組んだ。前年度においてAtg12-Atg5およびAtg3をそれぞれ精製し、混合液を用いて結晶化を試みたが結晶は得られなかった。Atg12-Atg5とAtg3の相互作用が弱いことが考えられたため、今年度は、Atg12-Atg5とAtg3を混合後、化学架橋剤で処理し、条件検討の後、化学架橋産物を効率良く得ることに成功した。Atg12-Atg5とAtg3の化学架橋産物を、タグ精製、イオン交換カラム、ゲル濾過カラムを通して精製したが、結晶化のスクリーニングを行うには精製度が不十分であったため、今後さらなる条件検討(精製プロトコールの改善や、異なる生物種由来のタンパク質への変更など)が必要な状況である。
4: 遅れている
結晶化に用いるため実験をスケールアップをしたところ、化学架橋の反応効率が下がってしまった。そのため大きなスケールで再度条件検討するのに時間を要した。また、化学架橋産物を精製するのに、架橋されなかったAtg3が上手く分離出来ず、精製方法を検討する必要があった。
単体のAtg3の混入を回避するため、Atg12とAtg3あるいはAtg3とAtg5をタンデムに繋げたコンストラクションを用いる。同時に熱耐性酵母K. marxianus等他生物種由来タンパク質を用いた解析について検討する。
予想していなかった問題が起こり、計画通りに実験が進まなかったため。この理由に加え、出産・育児のためにおよそ半年間研究を行うことが出来なかったため。
精製に用いる試薬の購入、結晶化スクリーニングキットの購入などに使用予定。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
EMBO J.
巻: 34 ページ: 2709-2719
10.15252/embj.201591440.