研究課題/領域番号 |
26840018
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
帯田 孝之 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (30578696)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞質分裂 / ESCRT / 構造生物学 |
研究実績の概要 |
ESCRTタンパク質複合体は、細胞質分裂の最後のステップである娘細胞間の膜の切断(abscission)等の膜の変形を担っている。このとき、ESCRT-IIタンパク質複合体が線維形成の起点として機能し、そしてESCRT-IIIタンパク質複合体が線維を形成することで膜が切断されると考えられている。そこで本研究では、ESCRT複合体による線維形成の起点、伸長、および線維による膜の切断まで、構造生物学的な観点から研究を行い、その詳細を明らかにすることで、そのメカニズムを説明することを目的としている。これまでに、酵母や古細菌に存在する10個のESCRT-IIIタンパク質について、クローニング・精製・結晶化を試みているが、まだ良好な結晶は得られていない。また、古細菌に存在する新規ESCRT-II様タンパク質については、既に良好な結晶を得ることに成功し、約1.7Åの分解能で構造精密化を行っている。この古細菌ESCRT-II様タンパク質については、DNAと結合することを新規に同定しており、古細菌のESCRT複合体オペロンの制御に関わっているのではないかと考えて、現在研究を進めている。古細菌ESCRT-II様タンパク質は、真核生物のESCRT-IIタンパク質がもつウイングドヘリックス構造と同様の立体構造をもつことが明らかとなったが、これまでにESCRT-IIIタンパク質との結合は確認できていない。一方で、DNAとの結合が見られることは、進化の過程でESCRT-IIタンパク質が新たな機能を獲得していったことを示しているのかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、必要なタンパク質の全てについて発現系の作成・精製を試みている。そのうちの幾つかについては、良好な結晶を得ることに成功し構造精密化を行っている。また、機能解析という点からも、立体構造をもとに変異体を作成し、相互作用実験等を進めている。以上の点から、研究はおおむね順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後に関しては、まずESCRT-IIIタンパク質を高純度に大量に精製することを目指す。そのために、新たな可溶性タグを用いることを考えており、現在発現系を作成している。また、構造決定に成功した新規ESCRT-II様タンパク質については、これまでにDNAに結合することは同定することに成功しており、今後はその結合が特異的であるのかや、ESCRT複合体のオペロンの制御にどのように関わっているのかを明らかとしたい。もう一方の新規古細菌ESCRT-II様タンパク質については、これまでに約1.7Åの良好な反射データを得ている。今後は、セレノメチオニン置換体を用いるなどして、構造決定を目指す予定である。また、これらの新規ESCRT-II様タンパク質が、どのようにESCRT複合体の繊維形成に関与しているのかを、電子顕微鏡等や様々な分光光度計を用いて明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の旅費・その他に関しては、合計400,000円を予算として計上していたが、実際には、315,560円の支出であった。そのため、約9万円が支出されずに次年度使用額として計上されたと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の114,740円については、物品費として消耗品費等に使用することを考えている。
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