研究課題/領域番号 |
26840028
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 文菜 自治医科大学, 医学部, 助教 (50717709)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヘモグロビン / 光解離 / 結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
生体の血液中で酸素の運搬を担う4量体タンパク質であるヘモグロビンは、各サブユニットにヘムを持ち、ヘム中心金属である鉄2価イオンの第六配位座に酸素、一酸化炭素等の配位子を可逆的に結合・解離させる機構になっている。ヘモグロビンは、結合配位子の個数によって自身の分子構造、及び配位子との親和性を大幅に変化させることが知られているが、その構造変化の過程を詳細に原子レベルで観測した例は無く、親和性制御の機構についても未だ不明な点が多い。 本研究では、ヘモグロビンの配位子解離に伴う構造変化の過程を動的に直接観測することを目的としており、一酸化炭素を結合させたヘモグロビン単結晶を用いて光照射下でのX 線結晶構造解析を行い、Difference Distance Matrix Plotによる詳細な構造変形解析を行った。その結果について、アメリカ生物物理学会、日本生物物理学会、日本放射光学会等で研究成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、ヒトヘモグロビンについても精製を行い、結晶化を行うための試料を新たに準備した。また、研究室内でヘモグロビン単結晶の分光測定を出来るようにするため、単結晶用の顕微分光装置を整備した。分光器部分とシャッター、フォトマル周辺の改良を行い、これまでよりも精度良く吸光スペクトルを測定できるようになった。また、これまで測定した光照射下のヘモグロビン単結晶の結晶構造解析結果について、新たにDifference Distance Matrix Plotによる、タンパク質主鎖部分の構造変形過程を解析することにより、ヘモグロビンの各サブユニット内での逐次的な構造変化が伝播し、分子全体の協同的な四次構造変化へと拡張していく様子を追跡することができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降、これまでに得られた低温、室温での各種ヘモグロビンの光解離課程の研究成果について、新たな解析結果と共に学術論文にまとめる予定である。また、適宜必要なデータを収集するため、追加のX線回折実験や分光実験を行うことも想定している。さらに、引き続き国内外での学会発表を行い、関連分野の他の研究グループと情報交換を行うと共に、自身の研究成果を広くアピールしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中に予定していた論文投稿がやや遅れているため、投稿費用分を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
現在執筆中の論文を、繰越した費用で投稿する。また、他の使用計画については予定通り執行する。
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