小胞体からの物質輸送を担うCOPII小胞は小胞体膜から形成される。平成27年度までにCOPII小胞形成反応に必須な因子であるSec16のN末端領域735アミノ酸残基断片(Sec16N735)を用いた試験管内再構成実験系により、small GTPase Sar1のGTP加水分解活性の活性化因子として働くことを明らかにした。平成28年度はその活性化機構をさらに詳細に調べた。またその結果をもとにin vivoにおける機能的役割についても調べた。 1. Sec16N735をさらに断片化し4種類の短い断片を精製した。この4種類の断片をそれぞれGTP結合型に変換したSar1とリポソームの混合液に加えGTP加水分解活性の測定を行なった。Sec16N735のN末端部分の断片では活性化は見られなかったが、C末端部分の566-735アミノ酸残基断片で活性化が見られた。 2. in vivoでのSec16の機能において566-735アミノ酸残基領域の役割を調べるために、この領域を欠損した変異体Sec16Δ566-735を作成した。まずGFP融合タンパク質を用い蛍光顕微鏡観察により細胞内局在を調べたが、野生型のものと比較して大きな変化は見られなかった。一方、細胞抽出液の遠心分離を行うと野生型Sec16は小胞体膜に強く結合しているため沈殿に分画されるのに対し、Sec16Δ566-735は上清画分に顕著に検出された。さらにSec16の膜結合機能に必要なCCD領域を欠損させたSec16Δ566-735ΔCCDでは、蛍光顕微鏡観察により細胞質への局在が見られ、また細胞分画においても上清画分にさらに強く検出された。 以上の結果からSec16 N末端の566-735アミノ酸残基領域は、Sar1 GTPaseの活性を調節に働き、またSec16の膜結合またはその安定化に働くことを新たに明らかにすることができた。
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