研究課題/領域番号 |
26840032
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
黒川 竜紀 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40527701)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イオンチャネル / 遺伝子発現制御 / 膜電位 |
研究実績の概要 |
遺伝子発現制御の破綻が神経疾患発病の一因であると考えられおり、活動電位と遺伝子発現との関係についての詳しいメカニズム解明は、脳の発達や可塑性の理解を深める点で重要な課題である。最近、電位依存性Ca2+チャネルのβ4サブユニットが活動電位に伴い核に移行し、遺伝子発現を抑制する新しい経路が同定された。しかし、活動電位に伴うα1サブユニットからのβ4サブユニットの解離について、詳細な機構はまだ分かっていない。本研究では、この機構を解明することにより、電位依存性Ca2+チャネルによる遺伝子発現制御について新たな知見を得ることを目的とする。本年度は、膜電位変化によるα1Aサブユニットからのβ4サブユニット解離現象の可視化を目指した。まず、全反射蛍光顕微鏡(TIRFM)によるβ4サブユニットの観察を行った。ラットβ4に蛍光タンパク質EGFPを融合させたβ4-EGFPとα1Aとα2/δサブユニットをHEK293細胞に共発現させ、140 mMのKClを含む溶液による脱分極刺激を与えた時の蛍光変化をTIRFMで観察した。脱分極刺激によりβ4がα1Aより解離するなら、蛍光強度の減少が見られるはずであったが、蛍光強度の変化は観察することが出来なかった。これは、KClでは脱分極刺激としては不十分であったためと考えられる。次に、パッチクランプ法と蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法による観察法の確立を目指した。まずα1AサブユニットのC末端領域にCFPを、β4サブユニットにYFPを付けることにより、FRET観察を試みたが、この組合せではFRETが観察出来なかった。現在CFPをβ4サブユニットの結合部位であるI-IIリンカーの位置に導入するなどFRETに最適な位置を探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の計画では、膜電位変化によるα1Aサブユニットからのβ4サブユニット解離現象の可視化方法の確立を達成する予定であったが、まだ確立出来ていないため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度も引き続き、膜電位変化によるα1Aサブユニットからのβ4サブユニット解離現象の可視化方法の確立を目指す。達成次第、β4サブユニット解離機構の解明に移行する。まず、電位センサーの動きを止めるミュータントやP/Q型Ca2+チャネルを阻害するω-agatoxin IVAを使用することにより、脱分極によるα1Aサブユニットの構造変化がI-IIリンカーを介して、β4サブユニットに伝わり解離する可能性を評価する。さらに、脱分極の伴い流入したCa2+の影響により、β4が解離する可能性も検証する必要があるため、P/Q型Ca2+チャネルを阻害するω-conotoxin MVIICを使用する。この阻害剤は、イオン透過ポアに結合することが報告されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
膜電位変化によるα1Aサブユニットからのβ4サブユニット解離現象の可視化方法の確立が遅れたため、高額な試薬である分子生物関連や阻害剤の購入を次年度に延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
膜電位変化によるα1Aサブユニットからのβ4サブユニット解離現象の可視化方法を確立するための分子生物関連試薬は順次購入する。可視化法の確立後、阻害剤の購入を進める。
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