遺伝子発現制御の破綻が神経疾患発病の一因であると考えられおり、活動電位と遺伝子発現との関係についての詳しいメカニズム解明は、脳の発達や可塑性の理解を深める点で重要な課題である。最近、電位依存性Ca2+チャネルのβ4サブユニットが活動電位に伴い核に移行し、遺伝子発現を抑制する新しい経路が同定された。しかし、活動電位に伴うα1サブユニットからのβ4サブユニットの解離について、詳細な機構はまだ分かっていない。本研究では、この機構を解明することにより、電位依存性Ca2+チャネルによる遺伝子発現制御について新たな知見を得ることを目的とする。本研究では、膜電位変化によるα1Aサブユニットからのβ4サブユニット解離現象の可視化を試みた。β4に蛍光タンパク質EGFPを融合させたβ4-EGFPとα1Aとα2/δサブユニットをHEK293細胞に共発現させ、脱分極刺激による蛍光変化を全反射蛍光顕微鏡で観察した。すると、脱分極刺激による蛍光の減少が見られたことから、脱分極刺激によるα1Aサブユニットからのβ4サブユニット解離を観察することに成功した。また、この現象は細胞外のCa2+がない条件では観察することが出来ないことから、β4サブユニット解離にはα1AサブユニットからのCa2+流入が必要であることも確認することが出来た。
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