リサイクリングエンドソーム(RE)に局在するRasの活性化機構およびRE膜脂質環境のRas活性化への関わりを明らかにすることで、RE発シグナル伝達機構の立証を目指した。 【26年度成果】COS-1細胞でRas活性化因子グアニンヌクレオチド交換因子(RasGRP1)を発現したところ、ゴルジ体を含む核近縁部に局在した。Rasと共発現した場合、RasGRP1はREでRasと共局在しRasは活性型であったが、REに局在できない脂質付加部位変異型RasとRasGRP1を共発現すると、RasGRP1は変異型Rasと共局在しなかった。一方、不活性型RasGRP1を構築し発現したところ、核近縁部に広く局在するものの野生型と異なりREでRasと強い共局在を示さず、Rasは不活性型であることが分かった。内在性RasGRP1の発現を抑制した細胞では、REに局在するRasは同じく不活性型であることが分かった。 【27年度成果】RasGRP1は恒常不活性型RasとREにおいて共局在できることが分かった。RasGRP1上流に位置するPLC-gammaの発現を抑制したところ、RasはREに局在するものの活性化が阻害されることを明らかにした。また、ホスファチジルセリン合成酵素1(PSS1)遺伝子をノックアウトしたCOS-1細胞を構築したが、当該細胞では野生型と比較してRasGRP1局在やRasの挙動は変化がなかった。
研究課題(1)では、RasGRP1がREに局在するRasを特異的に活性化することが示唆された。また、RasGRP1の局在の足場となるジアシルグリセロールがREに集積していることも分かり、RE発シグナル伝達機構が存在するという仮説を裏付ける重要な成果が得られたと考える。研究課題(2)では、PSS1遺伝子ノックアウト細胞の実験から、RE膜のPSがRas局在および活性化に影響を与えないことが分かった。
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