研究課題/領域番号 |
26840039
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
満島 勝 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (40621107)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ダイナミクス / リン酸化 / AMPK |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアは細胞のATP生産を行う重要なオルガネラであり、その機能異常は癌や神経疾患、糖尿病など様々な病態に関わるとされている。近年、ミトコンドリアは細胞の置かれた状況に応じて非常にダイナミックに形態や局在を変化させることが分かってきた。本研究では、ミトコンドリアの形態や局在を制御する新規なシグナル伝達経路を明らかとするため、AMPKのミトコンドリア基質を明らかとし、その結果として如何にして細胞が栄養要求に対応するためATP合成系を制御するかを明らかにし、その破綻が様々な疾患に寄与するかを検討することを目的としている。予備実験結果より、AMPKの活性化条件で、ミトコンドリアの局在と形態が変化すること、低速遠心による粗ミトコンドリア画分にAMPKの基質分子と考えられるリン酸化タンパク質を確認していた。そこで、ミトコンドリアの純度を上げるため、粗ミトコンドリア画分をショ糖密度勾配を用いた超遠心により精製し、AMPKの基質のリン酸化を検出する抗体で確認したところ、AMPKの活性依存的なタンパク質のリン酸化を確認した。そのサンプルを免疫沈降法により濃縮し、LC/LC-MS解析を行ったところ、複数のタンパク質を同定することに成功した。さらに、同定タンパク質の中には複数のリン酸化ペプチドも含まれていた。また、今回の質量分析解析では既知のミトコンドリアタンパク質が同定されていたため、ミトコンドリアの精製がうまくいっていることが確認できた。本研究では、ミトコンドリア形態制御に関与する分子の同定が一つの目標であるので、質量分析解析より同定されたタンパク質のうち、リン酸化ペプチドが含まれていたMffという分子に着目した。変異体解析によりMffの129番目のセリン残基がAMPKによってリン酸化されることを明らかにした。現在、そのリン酸化がミトコンドリアの形態、機能に与える影響を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は予備実験の結果、AMPKがミトコンドリア形態制御に関与することが示唆されており、ミトコンドリアにAMPKの標的分子が存在すると仮説を立てた。ショ糖密度勾配延伸による高純度精製ミトコンドリアにおいてもAMPKの基質候補分子の存在を見出し、その基質候補分子を免疫沈降して、LC/LC-MS解析により複数の候補因子を同定することに成功している。また、幸運なことに同定された因子の一つがミトコンドリアの分裂を制御するとの報告があるMffというタンパク質であった。しかし、その制御メカニズムはわかっていない。本研究ではAMPKが、Mffの129番目のセリン残基をリン酸化することを明らかとすることができた。現在そのリン酸化の意義を検討中で、実験計画はおおむね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で同定されたMffおよびAMPKによる129番目のセリンのリン酸化の生理的な機能を解析するため、それらのリン酸化できない変異体S129Aやリン酸化を模擬した変異体S129Dを作製し、その安定発現細胞株を作製する。その細胞において、ミトコンドリア形態やエネルギー状態をタイムラプス顕微鏡により観察する。また、ミトコンドリアの形態変化は神経細胞などの機能と相関することが示唆されているため、神経細胞株でも安定発現細胞を作製し、神経細胞分化や細胞死に関与するかを検討する。 一方、本研究ではMffに加えて複数のAMPKの基質候補を同定することに成功している。これらに関してもMff同様リン酸化部位の同定とその機能解析を行っていこうと考えている。
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