研究実績の概要 |
ミトコンドリアは細胞のATP生産を行う重要なオルガネラであり、その機能異常は癌や神経疾患、糖尿病など様々な病態に関わるとされている。先行研究でミトコンドリアがグルコース飢餓によりダイナミクスを変化させることを見出した。グルコース飢餓条件下でのミトコンドリアタンパク質から、AMPKの基質抗体で免疫沈降し、質量分析解析よりMffを同定した。グルコース飢餓においてMffのリン酸化が確認できそのリン酸化はAMPキナーゼに依存していた。更に、精製タンパク質を用いたin vitro キナーゼアッセイによりAMPキナーゼが直接MffのSer155をリン酸化することを明らかにした。Mffの非、偽リン酸化型変異体を作製しDrp-1との相互作用とミトコンドリアへの局在を確認したところ変化は確認できなかった。Mffをノックダウンすると、凝集したミトコンドリアが観察され、野生型のMffを入れ戻すと、部分的に解消されたが、非リン酸化変異体では効果が確認できなかった。また、非リン酸化型のMffは安定性が低いことが分かった。つまり、AMPKはグルコース飢餓条件でMffをリン酸化、安定化し、Drp-1依存的なミトコンドリア分裂を促進していることが示唆された。本研究を遂行途中に海外のグループによってMffがAMPKの新規基質と報告(Cell Signal, 2015)され、論文作成時に別の海外のグループによってエネルギーストレス時にAMPKによってMffのS155がリン酸化されることがミトコンドリアの分裂に重要であることを報告(Science 2016)されてしまったため、論文として報告ができなかった。現在はMff以外に同定したRalGAP1、FCHO2に関して実験を詰めている。
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