研究課題/領域番号 |
26840040
|
研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
古川 亜矢子 公益財団法人サントリー生命科学財団, その他部局等, 研究員 (90453050)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 蛋白質の動的構造解析 / 酵素の調節機構 |
研究実績の概要 |
HO-2は小胞体膜結合タンパク質であり、ヘム結合領域を含む構造領域、C末端側に2箇のCysを含む天然変性領域、膜結合領域から成る。生体内には、HO-2の様に構造領域と膜結合領域の間に天然変性領域を含む表在性膜タンパク質が多く存在する。しかしながら、この天然変性領域の機能についてはあまり解析がなされていない。まず、C末端領域を含むlong HO-2と含まないshort HO-2の酵素活性を比較した結果、long HO-2は、short HO-2より1.5倍酵素活性が高いことが分かっていた。long HO-2とshort HO-2の15N-HSQCスペクトルを比較すると、各々の残基の化学シフト値に大きな違いは見られないことから、C末端の天然変性領域が静的構造を変化させているとは考えにくい。そこでHO-2の動的構造を解析するために、PRE, R2 dispersion, CLEANEX-PM実験を実施した。PRE実験から、C末端天然変性領域が構造領域と弱く相互作用していることが分かった。また、short HO-2のR2 dispersionとCLEANEX-PM実験から、構造領域の多くの残基は揺らいでいて、いくつかの残基はfold状態とunfold状態を遷移していることも分かった。PREの結果と比較することによって、天然変性領域と相互作用している構造領域中の残基が揺らいでいることも分かった。C末端領域を含むlong HO2のR2 dispersion実験を行った結果、short HO-2と比較すると、構造変化の速度が異なることが明らかとなった。 また、細胞内でもC末端領域の有無で酵素活性が異なるかどうかを検証するために、HO-2ノックアウトマウスの胎児からHO-2-/-MEF細胞を作製後、その細胞に野生型HO-2または変異型HO-2を過剰発現させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HO-2ノックアウトマウスの胎児からHO-2-/-MEF細胞を作製し、そのKO細胞に野生型HO-2及び変異型HO-2を過剰発現させた。しかし、基質であるヘミンを細胞にかけるとHO-2のアイソザイムであるHO-1が誘導されてくるため、野生型と変異型との酵素活性の差を比較することができなかった。そこで、HO-1/HO-2コンディショナルダブルノックアウトしたマウスの胎児からMEF細胞を作製し直すことにしたため当初の予定よりも遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞内におけるHO-2C末端領域の酵素活性への寄与を解析するためのHO-1/HO-2のコンディショナルダブルノックアウトしたMEF細胞を作製する。更に、この細胞に野生型HO-2と変異型HO-2を過剰発現させた細胞を作製後、ヘミンを添加した際の酵素活性のアッセイ方法の確立を行う。また、低酸素状態におけるHO-2の動的構造解析を行う。ジスルフィド結合の形成を阻害する変異体を還元状態を模倣するHO-2として、15N標識体を調製し、野生型と同様のNMR解析を行う。得られた結果から、酸化・還元状態の動的構造変化があるアミノ酸が異なることを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
HO-1/HO-2ダブルノックアウト細胞の作製に時間がかかったため、それ以降のアッセイ系の確立に用いる試薬分は次年度使用に回す。
|
次年度使用額の使用計画 |
13C,15N, 2H標識したHO-2蛋白質を発現する際の培地として、13C,15N標識培地及び重水に使用する予定である。活性測定用に生化学実験用試薬を、細胞実験用に分子生物学実験用試薬を使用する予定である。
|