ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、コアタンパク質にヘパラン硫酸鎖が共有結合した分子であり、細胞膜表面および細胞外基質に局在する。ヘパラン硫酸プロテオグリカンはヘパラン硫酸鎖を介して様々な細胞増殖因子や細胞接着因子等の分子と相互作用することで多くの生理現象を調節している。このようなヘパラン硫酸の多様な機能は、ヘパラン硫酸がゴルジ体において複数のヘパラン硫酸修飾酵素による修飾を受け、極めて多彩な微細構造をもつためだと考えられている。一方、細胞膜表面に輸送されたヘパラン硫酸プロテオグリカンは最終的にリソソームに移行し、多種類のグリコシダーゼ及びスルファターゼによってヘパラン硫酸の非還元末端から分解される。重要なことに、ヒトにおいてこれらの分解酵素の異常は骨格異常や精神遅滞などを伴うムコ多糖代謝異常症を引き起こすことが知られている。しかしながら、これらの疾患がリソソームの機能異常により引き起こされるのか、もしくはヘパラン硫酸の蓄積によるシグナル活性の異常により引き起こされるのか、発症の直接的な原因はよく分かっていない。そこで本研究では、遺伝学的手法が容易なショウジョウバエを用いることでムコ多糖代謝モデルハエの確立と疾患発症のメカニズムの解明を目指している。特に平成29年度はヘパラン硫酸分解酵素の一つであるイズロニダーゼに注目し、イズロニダーゼの機能減少が引き起こす発生異常の解析とシグナル活性の異常を見出した。
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