前年度に引き続き、研究目的である、モータータンパク質の構造変化を光可逆的に誘起できるヌクレオチド誘導体の合成を試みた。 目的分子は、タンパク質に共有結合する部位、光応答する部位、ヌクレオチド部位の3つの部位から構成されることとなっているが、前年度においては、最終段階であるヌクレオチドと光応答部位のカップリング反応が完結しなかったことが問題点となっていた。 最終年度については、このカップリング反応の条件検討も行っていたが、光応答部位も多段階の合成ステップが必要であり、合成に費やされる時間があまりにも多大であるため、分子設計の変更を行った。 当初の計画では、タンパク質に共有する結合部位に対して、アジド基を用いていたが、これをマレイミド基に変えるなど、タンパク質側にも変異を導入することを前提とした分子設計を行った。光応答性部位にアゾベンゼンを利用することは当初の計画通りであるが、リンカーの長さが異なる2種類の誘導体を候補分子とした。現在、合成はこの2種類の分子に対して、1H-NMRにおいて、それぞれ、ヌクレオチドにカップリングする2段階前までのステップまで成功したことを確認した。 今後は、最終ステップまでの2段階に必要な量を合成し、それらの合成反応条件を検討し、新規な目的分子を合成する予定である。また、目的とするヌクレオチド合成後には、連携研究者と連絡を密にとり、標的タンパク質、すなわち、変異キネシンの設計、精製条件の検討を行う予定である。
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