研究課題
本申請課題の初年度である平成26年度は、ラミノパシーを引き起こす原因変異をもつLMNA Ig-like domainの遺伝子組換え蛋白質の大量発現および高純度精製を、それぞれ大腸菌発現系と各種クロマトグラフィーを用いて進めた。初年度の主な達成目標は、野生型および疾患原因変異型LMNA Ig-like domain組換え蛋白質を作製して溶液NMR解析を行い、野生型と疾患原因変異体にはどのような構造的差異があるかを見出すことであった。変異と疾患の関連について細胞生物学的な研究結果が報告されている変異は10種類ほどあるため、10種類の変異型LMNA Ig-like domain蛋白質を作製し、溶液NMR解析を行った。その結果、検討した10種類の変異体全てが、変異が入ったことにより立体構造および構造安定性が顕著に変化していることが判明した。また、化学シフト値が顕著に変化したアミノ酸残基を、野生型LMNA Ig-like domainの立体構造上にマッピングすることにより、各変異によって蛋白質のどの部分に顕著な構造変化が生じたかを明らかにした。また、疾患原因変異が入る事によってLMNA Ig-like domain蛋白質の分子運動のダイナミクスの変化を定量的に解析するため、主鎖窒素核の磁化の緩和解析を開始した。さらに、各変異型LMNAIg-like domain蛋白質の立体構造を溶液NMR法で明らかにするため、測定の際の試料の溶媒組成条件の検討と、立体構造解析に必要な各種多次元NMR測定の条件検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
申請時の達成目標をほぼ達成することが出来ただけでなく、次年度に行うことを想定していた検討を前倒しで開始出来ている。
現在測定を進めている、変異型LMNA Ig-like domainの緩和測定を進めて、当該蛋白質の分子運動のダイナミクスについて定量的に明らかにし、野生型と疾患原因変異では蛋白質上のどの領域にどのようなタイムスケールでどの程度の揺らぎの違いがあるかを、10種の変異体全てで明らかにする。また、現在予備的な条件検討を進めている、変異型LMNA Ig-like domainの立体構造決定に向けて、本格的に多次元NMR測定を進め、できる限り多くの変異体の立体構造を高分解能で決定し、野生型と疾患原因変異型の立体構造の違いを明らかにする。また、共同研究者とともに、各種変異体について哺乳動物細胞を使った機能アッセイを行い、立体構造の変化がどのように細胞機能の変化を引き起こすのかを明らかにする。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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