研究実績の概要 |
ATPaseは、エネルギーに関する広汎な反応を担う蛋白質ファミリーであり、構造変化を通して、多種多様な機能発現に至る。申請者は、このATPase蛋白質の構造変化に共通するメカニズムを明らかにすべく研究に取り組んできた。 一連のATPaseの構造変化は、基質であるATPの3つのイベント(ATP結合、加水分解反応、生成物解離)によって引き起こされる。従って構造変化の全貌を知るには、それら異なるステップによって引き起こされるすべての構造変化のメカニズムを個別に明らかにしていく必要がある。ATPaseファミリーを代表させる蛋白質として、ATPaseの中でも最も研究が進んでいるF1-ATPase(ATP合成・加水分解酵素)を選び、その中でも構造変化に最も重要な部分であるβサブユニットを構造変化研究の対象とした。また、構造変化を知る手段としては、原子レベルで連続した情報が得られる理論的手法(アンサンブルサンプリング法)を用いた。その結果、ATPを介した(ATP結合、加水分解反応、生成物解離)すべてのβサブユニット構造変化について、メカニズムを明らかにすることができた。 最終年度は、F1-ATPaseはもちろんのこと、F1-ATPase以外の蛋白質の研究にも携わった。その中でもGTP(ATPと同様の働きをするヌクレオチド)を介して、微小管の伸長・収縮をおこなうチューブリン蛋白質での、ヌクレオチド結合部位の構造に関する研究は、S. Fujimura, et al., BBRC 2017 485: 614-620に掲載された。
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