研究課題/領域番号 |
26840054
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
角南 智子 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (50554648)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 転写因子 / B1Hアッセイ / DNA / ホメオドメイン |
研究実績の概要 |
近年、亜鉛フィンガー蛋白質やTALエフェクターなどをベースとした人工転写因子が遺伝情報の書き換えのために開発されつつある。しかしながら、亜鉛フィンガー蛋白質はGCリッチな配列にしか結合できないこと、また、他の人工転写因子でも配列特異性が不十分であるため細胞への毒性があるという問題点がある。 人工転写因子の開発では、計算機モデリング等を利用して蛋白質を設計し、設計した蛋白質が目的どおりの配列特異性を有しているのかどうかを調べ、改良を繰り返すことが必要となる。この研究でボトルネックとなるのが配列特異性の解析の煩雑さである。本研究では、最近報告されたBacterial One-Hybrid法(B1H法)を有効に活用することで、高選択性の人工転写因子を効率的に作製することを目的として研究を進めている。 平成26年度は、B1Hアッセイ法を用いてDNAの配列特異性を検討するための実験系の立ち上げを行った。まず、野生型のエングレイルドホメオドメインや既知の変異体について、MengとNoyesらが報告したB1Hアッセイ法を適用することで、配列特異性の検証を行えることを確認した。次に、本研究で配列特異性の検証を予定している、より長いDNA配列を認識するタンパク質の場合にB1Hアッセイ法を適用した。結果、選択条件下にもかかわらず偽陽性のコロニーが多すぎるために配列特異性を明らかにすることができないことがわかった。そこで、申請者は、どのような条件であれば、偽陽性のコロニーが減るのかを詳細に検討し、実験条件を最適化し、配列特異性を明らかにできるようなアッセイ系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度には、本研究課題に必要なB1Hアッセイ系の構築に予想以上の時間がかかってしまったために、実験計画はやや遅れている。 平成26年度の研究により、B1H法の問題点を見つけ、解決することが出来た。これは、B1H法をより多くの系に適用し、DNA結合蛋白質の設計や、タンパク質のDNA認識機構の解析を行う研究に繋がる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) B1H法の改良:平成26年度から引き続き、B1H法の適用可能性を広げるために、偽陽性のコロニーが生じる理由を検討する。具体的には、リアルタイムPCR法やウェスタンブロッティング法を用いて、マーカー遺伝子の発現量と選択条件下でのコロニーの形成能との関係を調べ、現在のアッセイの問題点を洗い出す。 (2) タンデム型蛋白質の設計:エングレイルドホメオドメインは、6塩基長の塩基配列を特異的に認識する蛋白質である。6塩基はゲノム中の単一箇所を認識するには不十分な長さである。そこで、より長いDNA配列を認識するために、エングレイルドホメオドメインをリンカーでタンデムに繋いだ蛋白質を設計する。 (3) リンカーの最適化:リンカーの長さ・配列を種々に変更し、B1H法を用いることで、ドメインごとの配列特異性が変化しない最適な長さ・配列のリンカーを選択する。活性の測定を行い、活性が大幅に低下しないことを確認する。 (4)蛋白質の設計:新たな塩基配列特異性を有する蛋白質群を、研究グループで開発したシミュレーション計算で設計する。この方法では、特異性・結合強度に加えて構造安定性も選択基準に取り入れるため、蛋白質発現の成功率が高いことが期待できる。 (5) 設計した蛋白質の検証:設計した蛋白質の結合強度や配列特異性をB1Hアッセイ法やゲルシフトアッセイ法によって検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
シークエンス解析や試薬・プラスティック消耗品等の消耗品が当初の予定より安く購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
蛋白質を発現するための人工遺伝子合成費、遺伝子組換え実験消耗品、および、塩基配列特異性を調べるためのB1Hアッセイ用消耗品等に、次年度使用額を平成27年度分として請求した助成金に加えて使用することとする。また、成果を発表するための旅費にも充当する。
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