研究実績の概要 |
転写因子とDNAとの相互作用は生命活動の最も基本的なステップである。ゲノム中の任意の塩基配列に高選択的に結合する分子を人工的に作製する事ができれば、ゲノムDNAの編集や修飾、イメージング等多くの応用が考えられる。このような分子として、現在、TALEN、CRISPRといった分子が特にゲノムを編集する用途で広く使われ始めている。しかし、これら既存の転写因子には依然として分子量の割に選択性が不十分であったり、活性があまり高くなかったりという問題点がある。 我々はこのような問題点を改良した新たなタンパク質を設計するために、Engrailed homeodomainタンパク質に注目した。このタンパク質は約80残基と小型ながら、6bpの認識配列に単量体で非常に強く結合する性質がある。更に、このタンパク質は先行研究から様々な配列を認識可能な変異体を作成可能であることが既にわかっている。本研究では、このタンパク質をつなぎ、ゲノム中の単一の箇所を認識するようなリピート構造を作成できるのかどうかを検討した。 平成27年度は、平成26年度に引き続き、Bacterial One-Hybrid法(B1H法)の条件検討を進めた。B1H法では条件によっては、偽陽性が多く現れることが問題であるが、その機序を調べて偽陽性を取り除く方法を考案した。得られた系を適用して、Gly10, Gly5, Gly0、ΔDEKリンカーを有する4種類の蛋白質を作成し、どのような配列に結合するのかを調べた。その結果、Gly5で高い特異性で目的配列と結合していることを調べた。更に、EMSA法による結合アッセイによって、得られたタンパク質の活性が非常に良好であることを確認した。 更に発展的な課題として、既存のX線結晶構造解析のデータからDNAの構造変形のしやすさを取り出す方法論の開発も行った。
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