研究課題/領域番号 |
26840061
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柴 小菊 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70533561)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鞭毛運動 / 精子 / カルシウム |
研究実績の概要 |
本研究では、精子の受精におけるシグナル受容・応答の全容を明らかにすることを最終目標とし、本申請課題の研究期間においては、主に「受精における時空間的な精子機能調節におけるカルシウムシグナルの役割」に焦点を当てて研究を進めている。カタユウレイボヤ精子を主な材料として、ケージド化合物による局所的なカルシウム導入と蛍光イメージングを組み合わせることで精子機能調節におけるカルシウムシグナルの作用機序の解明を目指している。平成26年度はカルシウムイメージングと運動解析を行うことにより、卵由来因子SAAFによる精子運動活性化は膜貫通型アデニル酸シクラーゼによって主に制御されるが、精子走化性遊泳における鞭毛波形調節とカルシウムの流出入には可溶型アデニル酸シクラーゼが関与することを明らかにした。またカルシウムシグナルを時空間的に制御するためのケージド化合物を用いた実験系の開発を進めた。これらの成果については第12回国際精子学シンポジウム、日本動物学会第85回大会、Int J Mol Sci.誌において報告した。第12回国際精子学シンポジウムにおける口頭発表ではBest Presentation Awardを受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケージドカルシウムを用いた精子細胞内カルシウム制御システムの構築のためUVLEDを用いた系を開発しており検証実験を始めている。効率よくケージド体解除を行うためさまざまなUVLEDの比較検討を行った。またケージドカルシウムを用いたカタユウレイボヤ精子運動活性化機構、精子走化性機構の解明に向けて、アデニル酸シクラーゼを介したカルシウムシグナリングについて新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在構築中のUVLEDを用いた精子細胞内カルシウム制御システムを活用することによりカタユウレイボヤ精子のカルシウムシグナルに対する応答を観察する。昨年度に得られた精子走化性遊泳における鞭毛波形調節とカルシウムの流出入における可溶型アデニル酸シクラーゼの役割について着目し、ケージドカルシウムを用いたカタユウレイボヤ精子走化性機構の解明を目指す。カルシウムは鞭毛波形の非対称性を直接制御すると考えられているので、遊泳精子の細胞内カルシウムを制御したときの波形の変化を観察し、波形の非対称性が作られるメカニズムを調べる。カルシウム刺激から波形変化までのタイミングを解析することで走化性時の精子の応答や誘引物質感知機構について検証を行う。またアデニル酸シクラーゼ特異的阻害剤を用いることでCa2+流入後のcAMPシグナリングについても調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に計画していたフォトアクチベーション蛍光顕微鏡システム(オリンパス・IX71-PAFM、自作のLEDシステムと組み合わせるためシステムの一部を購入予定)(1台x3,594千円)が当該年度の交付金額では購入できなかったため、システムを変更し既存の顕微鏡を改良することにより同様の系の構築を試みた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越予算は、フォトアクチベーション蛍光顕微鏡システムの今後の改良にかかる顕微鏡備品、ホルダー等の工作費、ピンホールスライダなどに使用する。
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