研究課題/領域番号 |
26840063
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清光 智美 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10503443)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 染色体派生シグナル / RCC1 / RanGTP / NuMA |
研究実績の概要 |
申請者はこれまで、1)細胞表層ダイニンによる非対称な紡錘体の牽引、及び2)細胞表層ミオシンによる非対称な細胞膜の伸長が紡錘体配置の偏りを修正し、紡錘体の細胞中央配置に機能することを示してきた。本申請では、これら2つの制御機構の起点となる染色体派生のRan-GTPシグナルに焦点をあて、これら2つのシステムを協調的に制御する分子機構を明らかにすることを目的としている。
[結果] H26年度では、特にRanGTPとNuMA(ダイニンの結合因子)に焦点を当てて研究を進め、以下の点を明らかにした。1.染色体派生シグナルよるNuMAの細胞表層局在の制御にはNuMAのC末端領域にあるNLS配列は、必要ではなかった。2.NuMAの細胞表層局在に必要な最小領域、およびNuMAと細胞表層タンパク4.1Gの直接結合領域を同定した。3.染色体派生シグナル非感受性のNuMA変異体を発現誘導できる細胞株の樹立に成功した。4.AID法を用いてヒト細胞でRCC1(Ran GEF)を分裂期特異的に30分程度で分解することに成功した。
[意義・重要性] 1.の結果から、RanGTPが標的とするNLS配列が、NuMAの細胞表層局在制御に必要でないことが明らかとなった。これは新たな制御機構の仕組みを示唆しており、2.の結果は、今後その分子機構を理解するための有用なツールとなる。3.の結果から、ダイニンとは結合するが、染色体派生シグナル非感受性のNuMA変異体を発現誘導できる細胞株を樹立できたため、その分裂期表現型を観察することで、NuMAが染色体派生シグナルによって制御されることの意義に迫ることが可能となる。4.の結果を発展させ、今後はAID法とsiRNAあるいはCRISPR/Cas9法を組み合わせて、ヒト培養細胞では初めてとなる、RanGTP濃度勾配を分裂期特異的に破壊するシステムの樹立につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の5点について達成できた。 1.NuMAのNLS配列の必要性 2.NuMAの細胞表層局在ドメインの同定 3.NuMAと4.1Gの結合ドメインの同定 4.NuMAの細胞表層局在制御の意義を知るための変異体の作出 5.AID法を用いたRCC1、RanGAP1、Importinβの分裂期特異的分解の検討。これらの結果をうけて、H27年度ではNuMAの生化学的アプローチにも進展できる。
H26年度はNuMAの細胞生物学的アプローチに焦点を絞ったため、もう一つの主要テーマであるAnillinの研究を進展させられなかったが、NuMAの研究で得られた知見や方法、材料の一部はAnillinの研究にも応用可能であるため、H27年度に効率的に研究を進めるために活用できる。
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今後の研究の推進方策 |
NuMAに関しては、作成した変異体の表現型を解析し、染色体派生シグナルによるNuMAの細胞表層局在制御の意義を明らかにしたい。予備的な実験から、分裂期後期で表現型がでることが分かっているので、H27年度ではより詳細かつ定量的に検討する。また同定した細胞表層局在化ドメインの生化学的アッセイを進める。特に、NuMAと4.1G結合とその制御機構を精製タンパクを用いて検討する。また4.1G以外の結合因子を理解する目的で、NuMAの細胞表層局在化ドメインに結合するタンパク質を、質量分析を用いて明らかにしたい。
Anillinに関しては、細胞生物学的、生化学的アプローチを進める。NuMAで使用した方法や材料を一部は使用できるため、効率的に進めることができると考えている。
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