本研究では、染色体派生のRan-GTPシグナルが細胞表層タンパクの局在制御を介して、紡錘体配置と細胞膜伸長を協調的に制御する分子機構を明らかにすることを目的としている。
[結果] H27年度では、H26年度の成果に基づき以下の点を明らかにした。1. 染色体派生シグナル非感受性のNuMA変異体を過剰発現すると、紡錘体配置の極度な不安定化が起こり、細胞質分裂の失敗が誘導された。2. CRISPR/Cas9法を用いて、Ran-GTPを生み出すRCC1にAIDタグをノックインすることに成功し、分裂期停止状態で30分程度の間に分解誘導することに成功した。3. CRISPR/Cas9を用いて、内在性のヒトNuMAおよびAnillinの可視化に成功した。4. オーキシン依存的にヒトRCC1を分解すると、ヒトNuMAは分裂期を通過した後に核局在が阻害されたが、分裂期での紡錘体極局在や細胞表層局在は正常だった。5. ヒトAnillinおよびミオシン(MRLC2)に結合する新規タンパク質を、質量分析により同定した。
[意義・重要性] 1.の結果から、染色体派生シグナルによるNuMAの制御が細胞質分裂に重要であることが示唆された。また、2.3.4の結果から、ヒト細胞において、初めてRCC1を分裂期で分解することに成功し、内在性NuMAやAnillinの局在を観察することが可能となった。またその結果、分裂期のヒトNuMAの細胞表層や紡錘体極局在はRCC1には影響されないことが分かった。また5.の結果から、Anillinの細胞表層局在の分子メカニズムを理解する基礎知識を得ることができた。これらの結果はヒト細胞におけるRan-GTPの下流のイベントや分子シグナルを理解するための極めて重要な知見であり、1年以内に論文として公表したいと考えている。
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