研究課題
植物細胞の分裂過程には、動物細胞には見られない形態的特徴があると同時に、動物では必須の分裂期キナーゼやホスファターゼが存在しないという制御系における違いも存在する。しかし、植物細胞の分裂に特徴的な因子はまだわずかしか同定されておらず未解明な部分が多い。これまでに我々は、植物の細胞分裂の最後の過程である細胞質分裂の進行に特定のMAPKカスケードが必須であること、このカスケードの活性化がCDKによって負に制御されていることを示してきた。本研究では、この制御系を基盤として植物の細胞分裂に関わる新奇制御因子を同定し、植物の細胞分裂を制御する分子機構を解明することを目的とした。研究の結果、昨年度までに、CDKによる負の制御を解除し細胞分裂の促進に機能すると考えられるプロテインホスファターゼを同定することができた。本年度は、分裂期に特異的に機能する新規キナーゼの探索を進め、2つのレセプター様キナーゼと1つのキナーゼ結合因子を新規な細胞分裂制御因子の候補として同定した。これら3つの因子は、これまでに細胞分裂への関与は報告されていないが、同調培養したシロイヌナズナ培養細胞を用いてリアルタイムPCRによる発現解析を行ったところ、いずれもM期に特異的に発現が上昇することが分かった。これら因子の細胞内局在を解析したところ、レセプター様キナーゼの1つは細胞分裂前期から中期にかけては細胞質に局在し、細胞分裂の最終段階である細胞質分裂時には細胞板の周縁に局在することが明らかとなった。またこの因子はシロイヌナズナ個体において、根の先端や葉原基といった分裂の盛んな組織で特異的に発現していることも分かった。これらの結果から、本因子は、細胞分裂の制御過程において何らかの機能を有している可能性があると考えている。今後、同定された3つの因子について機能解析を進め、植物の細胞分裂の制御機構の解明を進める予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
New Phytologist
巻: - ページ: -
10.1111/nph.14532.
Plant and Cell Physiology
巻: 57 ページ: 1744-1755
10.1093/pcp/pcw098.
生化学
巻: 88 ページ: 465-475
領域融合レビュー
巻: 5 ページ: e005
10.7875/leading.author.5.e005
