研究課題
植物葉緑体は、絶えず変動する外的環境に自身の光合成機能を適合させるために、レドックス反応を基盤とした機能制御ネットワークを獲得してきた。本研究課題の目的は、高度に組織化されているであろう葉緑体レドックス制御ネットワークの分子基盤および生理意義を明らかにすることである。前年度までに、葉緑体に存在する5つのチオレドキシンサブタイプの標的選択性の違いなど、ネットワーク基盤の一端を解明することができた(Yoshida et al. 2015 J. Biol. Chem.)。平成27年度は、他の還元力伝達因子タンパク質にも研究対象を広げ、より包括的な視点からレドックス制御ネットワークの解明を試みた。具体的には、組換え体タンパク質を用いた生化学解析と変異株植物を用いた生理学解析を組み合わせ、分子メカニズムと生物学的重要性の両側面からの実態解明を目指した。その結果、葉緑体レドックス制御システムは、2つの還元力経路が主軸として存在し、それらが異なるレドックス制御能を協調的に果たすことで、葉緑体の機能調節および植物の生存を支えているという知見を得た。この成果は、植物が備えている環境応答戦略を新たに提示するものと言える(Yoshida and Hisabori, submitted)。また平成27年度は、生体内で光依存的な還元を受けるレドックスタンパク質群を網羅的に検出する手法の開発に大きく前進した。今後はこの手法を応用し、包括的な生体内レドックスダイナミクスの可視化を行う。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 291 ページ: 5860-5870
doi: 10.1074/jbc.M115.706424.
Biochimica et Biophysica Acta
巻: in press ページ: in press
doi: 10.1016/j.bbabio.2016.03.001.
巻: 290 ページ: 14278-14288
doi: 10.1074/jbc.M115.647545.
http://www.res.titech.ac.jp/~junkan/Hisabori_HomePage/index.html