研究課題
細胞分裂周期からDNA倍加周期(エンドサイクル)への転換には、G2/M期でのCDK活性の低下が関わってる。特に、E3リガーゼ後期促進複合体(APC/C)の活性化因子であるCCS52A1は、M期サイクリンタンパク質の分解を促進することでCDK活性を低下させ、エンドサイクルへの移行に働くことが知られている。昨年度までに、CCS52A1遺伝子の転写制御には、植物ホルモンのサイトカイニンによるシグナル伝達が直接制御していることを明らかにしている。さらに、植物はDNAに損傷を受けると、根の移行領域でサイトカイニン量を増加させることでCCS52A1遺伝子の転写を活性化させ、細胞分裂周期からエンドサイクルへの移行を促進していることを見出している。本年度は、植物がDNA損傷を受けると、CCS52A1以外にも、CDKと直接相互作用することによりCDK活性を阻害することが知られているSMR遺伝子の転写も誘導されることを明らかにした。そして、SMR遺伝子は、DNA損傷を受けると根端メリステムで発現誘導されたことから、分裂領域でのCDK活性を低下させることでエンドサイクルへの移行を制御していることが考えられる。さらに、植物のDNA損傷応答に関わる転写因子SOG1が、根でのCCS52A1とSMR遺伝子の転写誘導に関与していることを明らかにした。他にも、DNA損傷を受けるとM期サイクリン遺伝子の転写が低下することも明らかにした。これらの結果から、植物は環境ストレスを受けると、CDK阻害因子の転写の誘導や、M期サイクリン遺伝子の転写を減少させることで、根端でのCDK活性を低下させ、細胞分裂周期からエンドサイクルへの移行を制御していることが示唆された。
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