研究課題
これまでに我々は、シロイヌナズナの花茎を部分的に切断すると、主として髄組織の細胞が切断3日後から細胞分裂を開始し、約7日間で癒合することを報告している。また、切断花茎の癒合部における遺伝子発現を網羅的に解析し、切断1日後から3日後にかけて転写因子・細胞分裂及び植物ホルモンの合成・情報伝達に関連する遺伝子が誘導され、その後、細胞壁の分解・合成に関連する遺伝子が発現上昇していることを示した。また、傷の上部ではオーキシンが蓄積することによってANAC071が誘導され、傷の下部ではオーキシンが枯渇することによってRAP2.6Lが誘導されること、これら遺伝子の発現が、エチレンとジャスモン酸によっても促進的に制御されることを示した。今回の研究結果から、ANAC071と RAP2.6Lは、切断処理3時間以内に切断部位において発現が誘導されること、ジャスモン酸・エチレンの生合成や情報伝達に関わる遺伝子は、切断処理30分後以降に発現の誘導がみられることが明らかとなった。花茎の切断部位におけるジャスモン酸内生量は、切断後30分以内に上昇し、3時間以降は減少することも明らかとなった。現在、花茎の切断処理で生じたJAが組織癒合時に誘導する遺伝子に与える影響を明らかにするために、関連変異体を用いた解析を進めている。また、レーザーマイクロダイセクションを用いて癒合部の組織をより詳細に区分・採取する手法を用いて、これら遺伝子の時空間的発現解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
おおむね計画どおりに進捗している。組織癒合部における植物ホルモン内生量の変化と遺伝子発現誘導に関して、新たな知見を得られた。またレーザーマイクロダイセクションを用いた遺伝子発現解析法を確立し、より限定された部位での遺伝子発現解析を可能とするなど、一定の成果が得られている。微細構造観察、植物ホルモンのイメージング解析に関しては、試料作成法や検出法などにおいてさらなる検討が必要である。
当初の計画どおりに進める。前年度までに作成した形質転換体の機能解析を進めるとともに、電子顕微鏡を用いた微細構造変化の解析、イメージング質量分析計を用いたホルモンの分布・局在性変化の可視化にも取り組んでいく。
次年度使用額が生じた理由として、キャンペーン等による消耗品支出の削減、招待講演などによる旅費の負担減によるものであり、研究は計画通り順調に進行している。
遺伝子発現解析のための消耗品購入に使用する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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