研究課題/領域番号 |
26840099
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
塚谷 祐介 東京工業大学, 地球生命研究所, WPI研究員 (10421843)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光合成 / 色素 / バクテリオクロロフィル / 近赤外光 / 光合成の進化 |
研究実績の概要 |
全ての光合成細菌に保存されているクロロフィリド還元酵素(以下COR)という色素合成酵素は、バクテリオクロロフィル(以下BChl)-a生産性の光合成細菌内とBChl-b生産性細菌内では異なる基質特異性と反応性を持つことを我々は明らかとしてきた(Tsukatani et al. 2013 Sci. Rep.)。本研究課題では、2タイプのCORの触媒反応特性(つまり反応性変化の原因)を明らかとし、それを基にBChl色素の生合成経路の全体像を明らかすることを目的の1つとする。また、BChl-a を生産するモデル生物Rhodobacter sphaeroidesに、BChl-b生産性細菌由来のCORを導入・置換することで、取り扱いや培養が容易なモデル生物をBChl-bを生産し得るよう改変して、BChl-bの大量生産を実現することも目的としている。CORはBchX/BchY/BchZの3つのサブユニットで構成されるが、in vitroでの反応解析の結果から、異種由来のサブユニット間でも複合体を形成すること、及び酵素反応生成物はBchY/BchZ依存的であることが明らかとなった。また、当初の計画通り、元来BChl-a生産性のモデル生物R. sphaeroidesのCORサブユニット遺伝子を置換してBChl-b生産性に改変することに成功した(Tsukatani et al. 2015 Sci. Rep., 塚谷ら 特願2014-030085 PCT-2015-54552)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大きな目標の1つであったBChl-b生産変異株の取得に成功し、論文受理、国内特許出願、及び国際特許出願まで達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今回取得できたBChl-b生産性変異株は、元来BChl-aが結合していた光合成タンパク質(光捕集アンテナや反応中心複合体)中にBChl-bが結合していると予想される。変異株から光合成タンパク質を精製して詳細な分光学的解析を行うことで、2つのタイプ(BChl-aあるいはBChl-b結合型)の光合成タンパク質における吸収波長帯の大幅な変化・進化に対する光捕集アポ蛋白質側の寄与を議論する。 有機合成的に作製した様々な色素中間体を用いてCORの基質特異性を解析することで、BChl色素生合成経路におけるCORの作用機序を明らかとする。COR反応特性の違いを生み出すサブユニット構成や基質結合部位周辺のアミノ酸環境を特定して、BChl-aのエチル基形成型からBChl-bのエチリデン基形成型への進化(生成物の吸収帯の長波長化)に必要な因子を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進展し、当初計画通り進まなかった場合の対応(実験)をせずに済んだため。また、変異株の一部は共同研究先で作製したものを使用したため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿と特許申請も初年度に終了しており、計画よりも早くに得られたバクテリオクロロフィルb生産性に改変したモデル生物(Rhodobacter sphaeroides)の光合成器官の分光学的解析を推し進めるため、タンパク質精製等の生化学的解析にかかる消耗品費が適宜必要となる。
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