野生型および変異型低分子RNAセンサーラインの切断した葉におけるシグナル変動について、前年度に引き続き定量解析を行った。野生型センサーラインにおいて、切断後に蛍光シグナルの増加が見られることが明らかになった。この蛍光シグナルの増加は極めて早く、切断後約2時間で開始していた。一方、変異型センサーラインでは、蛍光シグナルの増加は確認されなかった。この結果は、葉の切断刺激に応答して、全ての葉の細胞において低分子RNAの減少が起きることを示す。この低分子RNAに相補的な配列をもつARF遺伝子は、翻訳産物の蓄積量が切断後約6時間で一過的に増加することがレポーターラインを用いた実験から明らかになっている。また、このARF遺伝子の過剰発現体で、オーキシン生合成を制御する遺伝子の一つであるYUCCA遺伝子の発現が誘導されることがqRT-PCRの結果から明らかになった。オーキシンレポーターGH3::Lucを用いた実験から、一過的にオーキシンが切断した細胞で増加していることが示されており、この増加は切断後12時間めであった。この結果は、オーキシン量の一過的な蓄積がARF遺伝子によって誘導されるオーキシン生合成の結果であるという仮説に矛盾しない。以上の結果を統合することで、当初リプログラミング関連することが予想された、オーキシンおよびオーキシンに関わる遺伝子の相互のネットワークを実験結果をもとに証明することができた。本研究成果については、現在論文を準備中である。また、新型発光オーキシンセンサーについては、二色の発光タンパク質や自己切断配列を導入するなど改良を図ったが、発光量が想定したよりも低く検出限界値を下回ることが多かった。また、基質を過剰に培地に添加すると生育阻害がかかるため、本システムを今後ヒメツリガネゴケの系で応用していくにあたっては感度の改善や発光量の増幅が必要であると考えられた。
|