研究実績の概要 |
平成28年度はH27年度までに行った、IBH1、PREグループ因子をbaitとし、シロイヌナズナ全転写因子1700個を対象とした酵母ツーハイブリッドスクリーニング(Y2H)から単離した70種類を超える転写因子について個別に総当たりの相互作用解析を行った。これらの中には、MADS, NACなど、既知のbHLHシステムの枠に収まらない因子や、転写リプレッサーなどが多数含まれており、システムの全体像が従来の理解よりも複雑であることがわかった。40個近い因子と相互作用するnon-DNA binding bHLHもあり、既知のtri-antagonistic bHLHシステムの枠に収まらない新奇グループの存在が強く示唆されている。新規に単離した因子は、順次、キメラリプレッサー植物体の形態観察を行い、矮性や短い鞘といった細胞の伸長阻害に由来する形質、あるいは、葉や茎の伸長など細胞の伸長促進に由来する形質を多数のラインで確認している。当初の予定よりも多くの相互作用因子が単離されたために、全ての因子の総当たりY2H解析を終了するに至らなかったが、一方で、non-DNA binding bHLHを中心としたタンパク質―タンパク質相互作用による転写因子の機能制御という巨大な未知のメカニズムの存在を明らかにすることができたことは大きな成果と言える。現在、これらのY2H相互作用解析結果、表現型観察結果、遺伝子構造などの知見を総合し、インフォマティクス的な手法を用いて、立体的な相互作用メカニズムモデルを構築し、細胞伸長を制御するメカニズムの全容解明につなげる準備を行っている。 また、H27年度までに着目していた光シグナリングに加えて、浸透圧ストレスによる細胞伸長制御についても解析を行い、興味深い結果を得た。今後は、細胞伸長制御における各種環境ストレス間のクロストークにも着目して研究を計画している。
|