根の内皮に形成されるスベリン層とカスパリー線は根、水分や養分、酸素の移動を制限している。本研究では、スベリン層形成制御因子を同定し、それを用いてスベリン層やカスパリー線の改変とストレス耐性付与を目指す。スベリン制御因子候補のキメラリプレッサー(CRES-T)植物はスベリン蓄積量が減少し、塩耐性が低下したことから、スベリン層形成を制御することが示唆された。次に、スベリン量の測定系を立ち上げるため、サンプル量が確保しやすいT-DNA挿入変異体種子を用いて分析を試みた結果、変異体ではスベリンやクチン由来の脂質性ポリエステルモノマーの組成が変化していることが明らかになった。そこで、スベリンの関与が知られている種子の保存性を解析したところ、転写因子の機能を強化することで種子にストレス耐性を付与できることを示した。一方で、スベリン合成酵素遺伝子の発現上昇は確認できていない為、クチンを含むクチクラ高蓄積がストレス耐性付与に寄与したと考えられた。引き続き、根における解析を進めていく。 スベリン及びカスパリー線形成を制御する新規転写因子を同定するため、CRES-Tライブラリから側根の数と形状を指標にスクリーニングを行った結果、15転写因子を同定した。その中から、カスパリー線に関与すると考えられるリグニン関係の転写因子や、CRES-Tラインのスベリン蓄積が減少する転写因子、スベリン合成酵素遺伝子の発現が低下するクチクラ関連転写因子を同定した。これらの機能強化型を根の内皮で発現する植物を作成した。今後、転写因子の機能解析やストレス耐性試験等を進める。
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