本年度はイメージングMS像の3次元化を目指したが、イメージングMS像の空間解像度が低いため3次元化した際に鮮明な像を得ることが難しいという問題が生じた。そこで本年度はイメージングMS像の高解像度化に取り組んだ。神経細胞で蛍光タンパクを発現するトランスジェニックホヤの脳切片において、蛍光顕微鏡により細胞の分布像を得ると同時に同一切片でイメージングMS像を得た。独自に開発した画像処理プログラムを用いて、細胞の分布像にイメージングMS像を融合させることで、通常のイメージングMSでは不可能な細胞レベルの解像度を持つイメージングMS像の取得に成功した。この方法により4つの神経ペプチドの分布を同一の切片において視覚化することに成功した。さらに代表的な神経ペプチド(Ci-TK-I)について、特異的抗体を用いた免疫染色と高解像度イメージングMS像を比較した結果、類似の分布パターンを示したことから、高解像度イメージングMSの信頼性を検証することができた。また、イメージングMSによって明らかにした神経ペプチドと末梢器官との相関性を明らかにする基盤構築を目的として、神経系で蛍光タンパクを発現するトランスジェニックホヤにおいて、蛍光を指標として神経線維の投射や神経細胞の分布を解析した。その結果、脳から入出水口、輸精管、輸卵管、直腸、卵巣等への神経投射パターンと、脳から卵巣まで続く神経細胞の集合体である背索叢について、ホールマウント観察による詳細な形態を明らかにした。
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