研究課題
ハエ脳内における神経ペプチド細胞間のネットワークを明らかとするため、平成26年度は主に以下の二点を実施した。1.画像重ね合わせによるin silicoでの神経投射パターン比較・解析法の確立 GAL4/UASシステムによって標識される多数の神経ペプチド発現パターンを網羅的に標準脳にマッピングするため、個々の脳をコンピュータ上で重ね合わせ(レジストレーション)するための高効率カスタマイズソフトウェアを開発した。具体的には共焦点画像をBrainAligner(Peng et al., 2011)によってレジストレーションする過程、及びその前後処理をコンピュータ上で一元的に管理するためのソフトウェアパイプラインを確立した。これにより、多数の脳イメージをハイスループットでレジストレーションするための体制が整った。2.神経ペプチド細胞の投射パターンのマッピング レジストレーションのための画像取得に先立ち、神経ペプチドを特異的に標識するGAL4系統とUAS-GFP系統の掛け合わせにより、脳内の神経ペプチド発現パターンのGFP標識が問題なくできることを確認した。また取得画像データの質がレジストレーションの結果に大きく影響するため、GFP抗体、レジストレーションのための脳背景染色の抗体や、データ取得のための顕微鏡設定等の条件検討を行った。この結果に基づき、各神経ペプチドの発現パターンを順次共焦点データとして取得した。現在までにほぼすべてのペプチドの脳内発現パターンの3次元画像が得られており、脳内マッピングのための準備がほぼ整った。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度の目標のうち、レジストレーションのためのカスタムソフトウェアパイプラインの確立は完了した。また神経ペプチドの脳内発現パターンの共焦点画像データ取得についてもほぼすべてのものについて完了している。神経ペプチドの網羅的脳内マッピングのための準備は整いつつあるため、当該年度の研究は順調に進展しているものと考えられる。
これまでの成果をうけ、平成27年度は当初の目標どおり次の二点を遂行する。1.神経ペプチドの脳内発現パターンの網羅的マッピング 開発した高効率レジストレーションソフトウェアパイプラインを用い、これまでに取得した神経ペプチド画像を標準脳にレジストレーションする。また残りの神経ペプチドについてもデータ取得し、順次レジストレーションを行う。これにより、神経ペプチドの網羅的脳内マッピングを完了する。また得られたデータの解析も試みる。2.神経ペプチドとドーパミン間のシナプス可視化、及びそのマッピング これまでに開発したPAM-GRASPキットを用い、神経ペプチドとドーパミン細胞の接続を可視化し、共焦点データとして取得する。得られたデータのレジストレーションにより、脳内における神経ペプチド‐ドーパミン接続部位の分布パターンの解析を行う。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
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