研究課題/領域番号 |
26840113
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松崎 仁美 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50436242)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲノム刷り込み / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
ゲノム刷り込み(genomic imprinting)は、親から伝わるエピジェネティックな情報が子で遺伝子発現を制御する、哺乳動物でみられる現象である。同現象が破綻すると発生・成長が異常となり、ヒトの疾患の原因となることも知られているため、制御メカニズムの解明は重要である。同現象の制御の中心となるエピジェネティック修飾は、刷り込み遺伝子座の発現制御領域(imprinting control region; ICR)におけるアリル特異的なDNAメチル化である。よって本研究は、遺伝子改変マウスを用いて、ICRにおけるDNAメチル化の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。 以前作製したIgf2/H19遺伝子座ICR(H19 ICR)導入トランスジェニック(Tg)マウスでは、導入H19 ICR断片は精子ではDNAメチル化されなかったが、受精後父由来特異的にDNAメチル化された。さらに、二分割したH19 ICR断片を用いた場合は、上流半分のみでアリル特異的メチル化が再現された。そこで本研究では、H19 ICRの受精後の特異的メチル化を指令する責任配列を同定するために、H19 ICRの上流から二段階に配列を欠損した断片を用いてTgマウスを作製した。同Tgマウスを解析し、その結果をもとに、さらに短い間隔で段階的に配列を欠損させた複数のH19 ICR断片を使ってTgマウスの作製を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、制御に必要なシス配列を決定した後、同配列がクロマチン状態へ与える影響の解析や作用するトランス因子の同定に発展させることで、H19 ICRにおけるDNAメチル化の分子メカニズムを解明する計画である。シス配列の決定のために、複数種類の欠損変異型H19 ICR断片を導入したTgマウスの作製・解析を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
作製中のTgマウスを系統化した後、導入変異型H19 ICR断片のDNAメチル化状態を解析して、受精後父由来特異的DNAメチル化制御に必要な配列を数十bpの範囲に決定する。その後、CRISPR/Casシステムを用いて同配列を内在H19 ICRから欠損したマウスを作製し、DNAメチル化状態の変化の有無を解析することで、内在遺伝子座においても必要性を検証する。 また、導入野生型H19 ICRでは、DNAメチル化以外のエピジェネティックな情報が生殖細胞で付加されて子に伝わり、アリルが由来する親の性別の識別とメチル化の制御に使われていると予想される。この情報の特定を目指して、精子における導入H19 ICRのクロマチンの状態を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Tgマウス系統の作製と解析を効率的に行うことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
作製したTgマウスの解析に必要な試薬・消耗品を購入する。 内在H19 ICR部分欠損マウスの作製を依頼する。また、作製した変異マウス系統の繁殖に必要な野生型マウスを購入する。 得られた成果を学会で発表するための旅費として使用する。
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