研究実績の概要 |
多くの昆虫種が「菌細胞」と呼ばれる特殊な細胞を有し,その細胞内に必須共生微生物を保持することで,昆虫―微生物間の強固な共生関係を成立させている.これまでの研究では,菌細胞を有する昆虫種に本格的な遺伝学的手法を適用できる実験モデル系が存在せず,菌細胞の発生を司る分子機構や細胞内共生の維持機構に関する研究手法が頭打ちとなっている.そこで,本研究では菌細胞を新規に獲得した種であるヒメナガカメムシを細胞内共生のモデル種に昇華させ, 菌細胞の獲得の分子基盤を解明することを目的としてそのゲノム解析とゲノム編集を行う.
本年度は,paired-end法のライブラリに加えて、新たにヒメナガカメムシのDNAを用いてmate pairライブラリを作製した. HiSeq1500によりシークエンスを行って,各ライブラリにつき200bp(4.5億リード),800bp(3500万リード),5.6kb(2億リード)、9kb(9300万リード)の配列が得られた。k-mer分布解析の結果,x100程度の十分なデータ量が得られたことが推定された。Platanusによってde novoアセンブルを試みたところ、コンティグ数 857,241,全長で808Mbと,フローサイトメーターによって推定された程度のゲノム長を得ることができた.しかしながら,N50の値は3.5kbにとどまり,良好な結果であったとはいえない。 次に,ゲノム編集技術の導入のため, ヒメナガカメムシを用いてCRISPR/Cas9による遺伝子のノックアウト実験を行う準備を進めていたが,所属機関の異動により年度の途中で実験実施場所の変更を余儀なくされたので,結果が得られる前に実験を中止した。
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