汎存種紅藻ヨゴレコナハダのトポタイプ標本を用いて,古い標本からDNAを抽出,次世代シーケンサで解析し,遺伝子の配列を決定する方法を確立した。本種はタイプ産地では絶滅種と考えられるが,得られた遺伝子配列をもとに,日本海で得られた近似種を本種と断定し,分類学的検討を行い,新属を提唱した。これらの結果はPLOS ONEに投稿し,現在reviseを投稿中である。 北海道から沖縄までの離島を含む日本沿岸21箇所と,アイルランド,フランス,イタリア,南アフリカ,カナダ,チリ,インドネシア,フィリピン,台湾から汎存種紅藻ワツナギソウ,ベニスナゴ,ダルスを蒐集,あるいは海外の研究協力者にサンプルを送付して頂き,上述の方法に基づいて設計したspecific primersを用いて,遺伝子の配列を決定した。3種共にタイプ産地のサンプル情報を得られたことから,分類学的検討を行い,ワツナギソウは従来充てられてきたChampia parvulaではなく,C. rectaとC. inkyua,新種 Champia sp. nov.の3種に分けられることを明らかにした(鈴木 2015 原生生物合同セミナー 学会発表)。ベニスナゴは,Schizymenia dubyiに加え,日本新産種S. apodaと新種Schizymenia sp. nov.の3種に分けられることを明らかにした(鈴木 2015 藻類談話会 学会発表)。ワツナギソウ,ベニスナゴそれぞれについて投稿論文を準備中である。ダルスは,北太平洋東北部に分布するPalmaria mollisに近縁であることが分かったが同種か別種かの判断には至らず,北海道東部からサハリン,ベーリング海,アラスカにかけての地域に生育するサンプルとの比較が必要である。
|