研究課題/領域番号 |
26840126
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
柿嶋 聡 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特別研究員(PD) (30648580)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生活史 / 一斉開花 / 周期遺伝子 / 沖縄 / キツネノマゴ科 / コダチスズムシソウ / 進化生態学 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
本研究は、6年周期で一斉開花・枯死するコダチスズムシソウを材料に、近縁種との比較と次世代シークエンサーを用いた解析を組み合わせることで、6年を測る時計遺伝子を探索し、周期的一斉開花の進化を探ることを目的とする。 まず、サンプル採集および生活史調査のための野外調査を行った。沖縄本島および八重山諸島での野外調査は7月、1月、3月の3回、台湾での野外調査は4月、11月の2回、それぞれ行った。野外調査では、生活史の観察、遺伝的解析用サンプルの採集を行った。生活史の観察の結果、コダチスズムシソウは沖縄本島では6年周期で一斉開花・枯死する一方で、八重山諸島では一斉開花が起きず、開花後にほとんどの個体は枯死したが、少数の個体は生存し翌年も再び開花していた。一方、台湾では一斉開花が起きず、開花後も多くの個体が生存し、翌年も再び開花することが明らかとなった。 発芽から6年目の開花までの遺伝子発現変動を明らかとし、6年を測る分子メカニズムの関連遺伝子を探索するため、温室において発芽からの経過時間の異なる個体について経時的にサンプリングを行った。現在、RNA-seqを行っている最中である。QTL解析を行い、6年を測る時計遺伝子領域の数や染色体上での位置を特定するため、コダチスズムシソウと近縁で毎年開花し複数回繁殖するオキナワスズムシソウのF2雑種を作成した。現在RAD-seqによるジェノタイピングと、フェノタイピングを進めている。さらに、6年を測る生理メカニズムの解明のため、温度や光環境を制御した栽培実験を行っている。どのような条件で開花が早まるのかあるいは遅くなるのか調べることで、どのように6年を測っているのか明らかにして行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
野外調査、遺伝子発現解析、QTL解析、栽培実験、いずれにおいても順調に研究が進行している。野外調査では、予定通りコダチスズムシソウの分布する全地域から網羅的にサンプリングが完了した。遺伝子発現解析では、経時的なサンプリングから得られた試料について、RNA-seqにより現在解析を行っている。QTL解析については、RAD-seqを行い、得られたデータのバイオインフォマティクス的な解析を新たに開始した。栽培実験では、これまでの温度による影響の検証に加え、日長の影響の検証を開始した。このように、創意工夫により、研究を押し進めた。
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今後の研究の推進方策 |
サンプル採集および生活史調査のための野外調査を継続して行う。特にコダチスズムシソウの近縁種で台湾に分布するStrobilanthes rankanensisやS. lanyuensisの生活史を調べ、6年を測る時計遺伝子の探索において、コダチスズムシソウとの比較に有効であるかどうか検討する。発芽からの経過時間の異なる個体について経時的に採取したサンプルのRNA-seqのデータを解析し、発芽から6年目の開花までの遺伝子発現変動を明らかとする。QTL解析については、RAD-seqのデータをもとにジェノタイピングを進める。温度や光環境を制御した栽培実験では、今年度中に開花が生じる予定であるため、どのような条件で開花が早まるのかあるいは遅くなるのか検討する。
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