研究課題
周期生物とは2年以上の決まった周期で集団が一斉に繁殖を行ない、死んでしまう生物である。周期生物はそれぞれの個体が2年以上の長期間を厳密に測ることで同調的に開花していることから、長期間を正確に測る生物時計システムを持つと考えられる。そこで本研究課題では、6年周期で一斉開花・枯死するコダチスズムシソウを材料に、6年を測る周期遺伝子(時計遺伝子)を探索することを目的とする。どのような環境シグナルを用いて正確に長期間を測っているのかを明らかとするため、日長と気温を制御した栽培実験を行った。その結果、日長の違いは開花までの時間に影響を与えない一方で、気温が開花までの期間を認識するのに重要である可能性が示唆された。発芽から開花までの期間の遺伝子発現変動を追うため、発芽からの経過年数が異なる栽培個体を用いてサンプリングを行い、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行う。これまでに、代表個体を用いたRNA-seqデータから、多くの開花関連遺伝子を検出することに成功した。6年目に開花する形質および1回繁殖性の形質について、コダチスズムシソウと、毎年開花する複数回繁殖型の近縁種オキナワスズムシソウの交配により得られたF2雑種集団を用いて、QTL解析を行う。これまでにRAD-seqを用いてF2雑種個体のジェノタイピングを進めた。また、開花個体および枯死個体を記録することによりフェノタイピングを行った。
1: 当初の計画以上に進展している
栽培実験、遺伝子発現解析、QTL解析のいずれも、順調に進展した。特に、栽培実験では、開花までの期間を正確に測るための環境シグナルとして気温が重要であることが明らかとなり、今後の研究の展開において、きわめて重要な知見が得られたと考えられる。また、RNA-seqデータから、多くの開花関連遺伝子が検出できたことから、発芽から開花までの遺伝子発現変動解析に向けて順調に研究が進んだ。
栽培実験、遺伝子発現解析、QTL解析を継続して行う。栽培実験では、気温の違いに対する反応性を検討するため、複数の気温条件で栽培し、比較を行っていく。遺伝子発現解析では、RNA-seqデータを用いて、開花関連遺伝子の発芽から開花までの発現変動を検証していく。QTL解析では、ジェノタイピング結果を用いて、連鎖地図を作成するとともに、F2雑種集団のフェノタイピングを進める。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Science Advances
巻: 2 ページ: e1501548
10.1126/sciadv.1501548
Journal of evolutionary biology
巻: 28 ページ: 1270-1277
10.1111/jeb.12653
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 14094
10.1038/srep14094
巻: 5 ページ: 15376
10.1038/srep15376
Royal Society Open Science
巻: 2 ページ: 150330
10.1098/rsos.150330
Notornis
巻: 62 ページ: 231-232
莎草研究
巻: 19 ページ: 41-51
Butterflies
巻: 68 ページ: 50-57