研究課題/領域番号 |
26840130
|
研究機関 | 沖縄工業高等専門学校 |
研究代表者 |
渡邊 謙太 沖縄工業高等専門学校, 技術室, 技術専門職員 (50510111)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ボチョウジ属 / 倍数性 / 性表現 / 二型花柱性 / 雌雄異株 / 雌雄同株 / 雑種 |
研究実績の概要 |
本研究は、ナガミボチョウジに見られる雌雄同株性が二型花柱性の祖先種からどのように進化したのかについて、倍数性や送粉者との関係から解明することを目的としている。 本年度は、下記4つの項目について研究を進めた。1)系統関係と性表現の進化経路を明らかにするために、日本と近隣国に分布する近縁種のDNAサンプルの採集と性表現の調査を実施した。2)近縁種の倍数性を明らかにするために、染色体調査用の挿し木、実生の収集、及びフローサイトメトリによるDNA含有量測定を実施した。3)倍数性起源を探るためのDNAマーカーの開発を実施した。4)ナガミボチョウジと推定母種であるボチョウジの種間関係を探るため、交雑現象と土壌による棲み分けを調査した。 現在までに琉球列島全域の15集団から挿し木・実生とDNAサンプルを収集しており、順次DNA抽出と染色体の調査を進めている。現在のところ、これまで報告のあった染色体数がすべての集団で確認されている。また、近縁種であるオガサワラボチョウジ、コウトウボチョウジについては、機能的二型花柱性を有することを確認した。DNAマーカーとして、一般的に用いられる中立マーカーのほか、いくつかのシングルコピー遺伝子が解析に有効であることがわかってきた。いくつかの集団でナガミボチョウジとボチョウジの種間交雑が確認されたが、F1不稔であることが推測された。ナガミボチョウジはアルカリ土壌に、ボチョウジは酸性土壌に生育していることがわかってきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に進めるべき材料のサンプリングと解析用のDNAマーカーの開発が計画通り順調に進んでいる。また、ナガミボチョウジと推定母種であるボチョウジの種間関係を、交雑現象と土壌適応の違いという2点から調査している。ナガミボチョウジがどのように種分化したのかという問いについて、分子と生態の両面から迫りつつある。また不確定であった近縁数種の性表現についても明らかにすることができた。これらの結果の一部は論文、学会大会にて順次発表している。
|
今後の研究の推進方策 |
Ⅰ.両種の倍数性と性表現を地理的分布域全体で明らかにするために、これまで採集できていない国内外のボチョウジとナガミボチョウジについて、挿し穂と種子の採集を行い、 温室で栽培している植物体については、染色体数の決定を完了する。また花期には花のサンプリングを実施する。 Ⅱ.ナガミボチョウジの染色体の由来を明らかにするために、近縁種を含めた系統解析を行う。また引き続きDNAマーカーの開発を続けるとともに、これまで得られたDNAマーカーを用いて、染色体セットの由来を明らかにする。 Ⅲ. ナガミボチョウジとボチョウジの種間関係を明らかにするために、交雑現象の解明と、土壌適応の違いについて、フローサイトメトリ解析、人為授粉実験、移植実験、水耕栽培実験を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外調査(台湾標本庫)が年度をまたいだため、調査旅費の後半が27年度分として次年度使用とみなされたことが次年度使用額が生じた最大の原因であるが、これについてはすでに27年度当初に執行ずみである。
|
次年度使用額の使用計画 |
上述のように、次年度使用額の大部分については調査旅費として執行済みである。今後も計画に従い、適正に研究を遂行していく。
|