研究課題
本研究は祖先的に二型花柱性を有するボチョウジ属において、現在ナガミボチョウジに見られる雌雄異花同株性がどのように進化してきたかについて、倍数性や送粉者との関係、近縁種の性表現と系統関係、さらには同所的に分布する近縁種との種間関係から解明することを目的としていた。本年度は、ナガミボチョウジの雌雄同株性の実態を明らかにする調査のデータ解析を実施し、論文を執筆し投稿した(査読中)。またDNAマーカーを用いたナガミボチョウジと周辺種の系統解析・集団遺伝的解析を実施した。また母親種と考えられる近縁種ボチョウジとの系統関係と土壌適応の差など、種間関係について調査を進めた。さらに、昨年度に加え新たに数種の近縁種の性表現を調査して、雌雄同株性の進化的背景を探索した。そして琉球列島に分布するボチョウジ属3種(ナガミボチョウジ・ボチョウジ・シラタマカズラ)の種子休眠・発芽特性の実験を実施した。ナガミボチョウジは、多くの花が雄花か雌花という単性花をつけるが、稀に両性花を作ることもわかった。株としては雌株・雌雄異花同株を中心として、雄株や両全性株を同一集団に含む雑居性であることがわかった。DNAによる系統解析では、第一にナガミボチョウジとボチョウジの近縁性が示され、さらにそれらが中国大陸またはフィリピン等の東南アジアからやってきたことが示唆されたが、周辺種のサンプルが足りないためにその起源を特定するには至らなかった。ナガミボチョウジは、8倍体であるが、少なくとも4倍体であるボチョウジが片親であることが想定された。ナガミボチョウジの倍数性が、ボチョウジの単純倍数化による同質倍数体であるか、ボチョウジと第三種との交雑由来の異質倍数体である可能性があり、現在ゲノムデータを解析して、その起源の解明を試みている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Plant Species Biology
巻: 33 ページ: 16~27
10.1111/1442-1984.12183
Japanese Journal of Botany
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
沖縄高専紀要
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