本研究では二型花柱性を主とするアカネ科ボチョウジ属において、雌雄異花同株を含む特異な性表現を有する可能性が考えられたナガミボチョウジについて、その性表現と繁殖の実態を明らかにし、その進化的背景を解明することを目的として調査を進めた。その結果、ナガミボチョウジは雌雄異花同株や雌株等を集団内に含む雑居性という複雑な性表現を有し、主にハエ類やハチ類により送粉されていることが明らかになった。近縁種との系統関係にはなお不明な部分が残されたものの、最も近縁で側所的に生育するボチョウジが4倍体であることなどを考慮すると、8倍体に倍数化したことが現在見られる性表現の進化に関与した可能性が考えられた。
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