研究課題/領域番号 |
26840131
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
武藤 望生 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究推進支援員 (50724267)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 系統地理 / 南シナ海 / 魚類 / ミトコンドリアDNA / マイクロサテライト / 二次的接触 |
研究実績の概要 |
アジ科魚類のメアジ,マテアジ,オニアジと,サバ科魚類のグルクマについて,ミトコンドリアDNA(mtDNA)のCOIおよびCytb遺伝子塩基配列を用いて南シナ海内部の遺伝的集団構造をそれぞれ分析した.その結果,明瞭に分化した2つのmtDNA系統を含む種と,1系統からなる種があることが判明した.前者は,歴史的な分断により形成された遺伝的に異質な種内分集団が,現在南シナ海において出合っているものと考えられた.更に,2系統間の分岐の深さは種毎に異なっており,種毎に異なる時期に歴史的な分断を経験したと考えられた.これらは南シナ海の特異な地史,すなわち大陸棚“スンダシェルフ”が更新世の海水準変動により陸地化と水没を繰り返したことと関係している可能性が高い. また,上記4種を含む10種の魚類について,マイクロサテライト多型解析用のプライマーを開発した.これらのうち一部の種では,各遺伝子座の変異性確認のための予備実験を実施し,集団遺伝解析に適した変異性を示す遺伝子座を選定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象種と調査地の変更があったものの,研究の遂行に支障のないものである.地点ごとの標本数が不足している種は,27年度に追加採集を実施する見通しが立っている. 集団遺伝解析は,計画より遅れている部分と前倒しで実施している部分があり,全体としてはおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
インド洋と太平洋に面した調査地の標本を採集する.また,日本周辺海域においても補助的に採集を行う.これらのmtDNA塩基配列を分析し,26年度に得た南シナ海内部のデータと比較することによって,南シナ海集団と周辺海域集団の関係を種毎に明らかにする. また,26年度に開発したマイクロサテライトプライマーを用いて,マルチプレックスPCR系の構築を行う.メアジ,マテアジ,オニアジ,グルクマについては,計画を前倒ししてマイクロサテライト多型解析を本格的に開始する.26年度に南シナ海内部の調査地点において十分な標本が得られなかった種については追加採集を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた標本採集調査を,やむを得ず中止しなければならない状況があったため,当該旅費と消耗品費用により次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
27年度の当初計画通り標本採集調査の旅費,分析用物品費,学会発表の旅費及び参加費,論文の印刷費に使用するとともに,26年度に実施できなかった標本採集調査を実施することにより使用する.
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