研究課題
<最終年度の成果> 最終年度はキス科魚類のミトコンドリアDNA(mtDNA)と核DNA解析,アジ科魚類のmtDNA解析を中心に行った.前者では,モトギスがmtDNAと核DNAいずれも明瞭に分化した複数の集団に分けられることが判明した.後者では,生態的特徴の似通った2種のマルアジ属魚類が互いに大きく異なる集団構造をもつことが判明した.<研究期間を通した成果> 南シナ海周辺に分布する18種の海産魚類を対象に,mtDNA部分塩基配列にもとづく系統地理学的分析を実施したところ,明瞭に分解した2系統を含む種と,1系統のみからなる種に分けられた.前者は,更新世の氷期-間氷期サイクルにともなう海水準変動によってインド洋と太平洋にそれぞれ隔離された分集団が,現在南シナ海において分布を重複させているものと考えられる.そうした種で2系統の分岐年代を推定したところ,種によってまちまちであった.また,そうした種毎の分布域形成史と,生態的特徴(特に浮遊性 / 底生の区分)および系統的位置(所属する分類群)の関係を検討したが,いずれも明瞭な対応は見られなかった.対象種のうち11種については,次世代シーケンシングによってマイクロサテライトマーカー(STR)を開発した.mtDNAが2系統に分離する種のうちの一部において,STRを用いて核ゲノムにおける分化を検証したところ,2系統と対応する明瞭な分化がみられた.これらは,形態的には識別が困難であるにもかかわらず繁殖集団を異にする隠蔽種と考えられる.さらにそれらの一部では,隠蔽種の間で種間交雑がおきていることも明らかになった.一部の種では日本列島周辺においても南シナ海と同様の現象が見られた.すなわち,インド洋集団と太平洋集団が同所的に分布していることが判明した.今後はこうした種を対象として,東アジア沿岸全域に渡る分布域の形成過程を検討していく予定である.
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Conservation Genetics Resources
巻: 未定 ページ: 未定
10.1007/s12686-017-0699-z
Ichthyological Research
10.1007/s10228-016-0561-4
Marine Biodiversity
10.1007/s12526-016-0537-7
International Aquatic Research
巻: 8 ページ: 169-178
巻: 63 ページ: 275-287