平成27年度は,新規プロトアルベオラータ類・アピコモナス類の探索と培養株としての確立を引き続き行った。平成26年度に成果として公表したHemistasia phaeocysticolaの培養株を用いた飼育培養実験を行い、その近縁種を効率的に培養株として確立する新手法を確立した。その手法により、35株の真核微生物の培養株を確立することに成功した。また最終年度でもある平成27年度は、これまでに確立した培養株の系統的位置の推定を行った。一部の培養株については、微細構造の観察を行い形態的特徴の把握も行った。特にYPF1610株は、過去にPhyllomitus amylophagusとして記載され、その後あまり研究がされず系統的位置も不明のまま残されている真核微生物と同定された。現在、YPF1610株はより詳細な微細構造観察とともに複数遺伝子解析による系統的位置の検証を進めている。他の培養株についても、同様に系統的位置と微細構造の観察を今後推し進める予定である。 新たに確立した培養株を用いた研究と並行し、難培養性の原始的アルベオラータ生物であるグレガリン類についても研究を行った。これまでグレガリン類の寄生が知られていなかった複数種の多毛類を解剖し、そこからグレガリン類の探索を行った。その結果、ミズヒキゴカイ科多毛類の一種から未記載種と考えられるグレガリンを発見することに成功した。現在、本未記載種の系統的位置の把握と微細構造情報の収集を行い、新種として記載報告するための準備を進めている。また、得られた微細構造情報をもとにアピコンプレクサ亜門の初期進化についても議論を進める予定である。
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