研究課題/領域番号 |
26840134
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研究機関 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 |
研究代表者 |
渡辺 恭平 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 学芸員 (70710474)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分類学 / インベントリー / 生物地理学 / 自然史博物館 / 系統学 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究に必要な試料の収集を行った。野外調査としては南西諸島の奄美大島、徳之島、西表島で重点的な調査を行い、多数の試料を確保した。また、標本調査としては農業環境技術研究所で調査を行い、不足している試料の確保を行った。また、中国国家林業局収蔵のヒメバチ科寄生蜂の標本を、日本人としてはじめて調査し、日本と中国でそれぞれ独立して研究されてきたことに起因する、分類学的問題を解決するために重要なデータと、人材交流の基盤を得た。 今年度の具体的な成果としては、20本の査読誌への学術論文(うち6本は印刷中)と1回の国際学会発表、5回の国内学会発表が挙げられる。査読誌の学術論文では、ウスマルヒメバチ、オナガバチ、アメバチ、メンガタヒメバチ、ハバチヤドリヒメバチ、ヒラタヒメバチなどで日本新産種の記録や新種記載を行い、あわせてDNAバーコードの登録や分子情報による系統解析についても、研究協力者の協力を得て行った。分子実験、解析については、今年度の研究により、技術的な問題点はないことが確認された。その他、生物地理を考える上で重要なインベントリー情報の充実として、東京都の皇居、青森県、屋久島においては地域の目録を作成した。特に屋久島については、南西諸島ではじめて網羅的なヒメバチの目録をすることができ、60種を超える新記録を報告した。従来報告してきた各地の目録とあわせ、日本国内での分布パターンを知る上で、重要な知見となるものといえる。 採集の方法が特殊なヒメバチの採集方法は、時として珍しい昆虫を採集したり、その生態を解明する糸口となる。今回の調査でも、戦前も含め記録がほとんどなかったアナバチ、ツチスガリや、日本新産のツノヤセバチなどが確認され、それらについても報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① 各調査において、当初予想と若干異なるものの、研究の推進には十分な量の、多数新知見が得られており、併せて予期しない新知見も得られているため。 ② それらの調査研究を、学会発表や論文として十分な量とペースでアウトプットできていると思うため。 ③ 博物館の他の諸業務と、良いバランスで取り組めているため。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね初年度のペースで、研究を行ってゆく。ただし、特に南西諸島の調査地において、各地の環境の悪化が認められたため、環境が破壊される恐れが高い地域に少しバイアスをかけて調査を行い、成果の報告についても前倒し、もしくは優先的に行う計画である。DNAを用いた解析は、初年度の検討結果から技術的な問題点はないため、今年度同様、順次データの蓄積をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料の同定、観察に使用する顕微鏡について、高性能なものが必要とされるので、本年度の研究費の一部を次年度に繰り越し、顕微鏡の購入に充てるため。これにより、研究の諸活動の水準を下げることなく、顕微鏡を購入できる。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の理由通り、顕微鏡の購入に用いる。
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備考 |
Image database of Parasitoid waspsについては、研究協力者と一緒に作成し、今年度より公開
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