本研究およびに関連する調査による業績として論文35編(うち印刷中1編)、報文11編を報告した。代表的な成果は下記の通りである。 ① 新属Tanzawanaを日本の本州から見出した。② 日本から以下の属や亜属を初記録した(カッコは近隣地域での既知分布)、Neurateles属のハエヒメバチ(アジア初記録)、Pion属のマルヒメバチ(極東ロシア、中国)、Seticornuta属のメンガタヒメバチ(中国、韓国)、Skiapus属のアメバチ(中国、韓国)、Leptophion属のアメバチ(東南アジア)、Weisia亜属のアメバチモドキ(東南アジアとオーストラリア)。③ 国後島からロシアの研究者によって記録された種を7種、日本本土部から発見し、ファウナのつながりを認めた。④ 日本産ハマキヒメバチ族についてモノグラフを出版し、日本産種を8属109種に整理した。本研究により、日本だけで欧州を大きく上回る多様性が存在することが明らかとなり、アジアには想像以上に多様なハマキヒメバチが生息していることが示唆された。特筆すべき点としてTeleutaea属は国内産種すべてが極東ロシアや中国にも分布し、固有種が認められなかった点や、日本国内の多様性は北海道が著しく高く、南に行くほど種数が減少し、南西諸島でも北琉球から南琉球にかけて属と種の多様性が減少する点が明らかとなった。⑤ 従来色彩によって分類されていたツマグロケンヒメバチとトサケンヒメバチの遺伝子を神戸大学の伊藤誠人氏とともに検討し、トサケンヒメバチに大きな体色の変異があり、その一部がツマグロケンヒメバチと同じ体色になっており、誤同定が生じていることを発見した。また、遺伝子解析の結果に対応して形態を見直したところ、頭部の構造等で区別できることも明らかにした。
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