研究課題/領域番号 |
26840135
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
内海 俊介 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10642019)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 適応 / 群集 / 個体群 / 遺伝変異 / 遺伝相関 / ヤナギルリハムシ / 摂食選好性 / メソコスム |
研究実績の概要 |
北大雨龍研究林内外のヤナギルリハムシ4個体群からサンプルを採集して飼育系統を作成した。その系統の子孫について、若葉に対する摂食選好性、捕食回避行動、顎サイズ、翅サイズなどの表現形質を測定し、遺伝率や遺伝相関の解析を行った。それらの形質には有意な遺伝率が検出され、特に摂食と捕食回避の行動形質では、雌において高い遺伝率があり有意な遺伝相関があることが明らかになった。 次に、これらの家系から144個体のDNAを抽出し、次世代シーケンサーによるRAD-seqを行った。それによって、SNPを含む2万個以上のコンティグが得られた。現在、表現形質とのゲノムワイド関連解析を開始している。今後、個体群に特異的または摂食選好性と相関があるSNPを検出し、進化動態を追跡するのに適したSNPマーカーを絞りこむ予定である。 今年度は、群集-進化動態のフィードバックループを検証するための大規模野外操作実験も開始した。北大雨龍研究林内にオノエヤナギ成木1-3本(6-8m)を防虫網で覆ったメソコスムを建設した。このメソコスム内に、上述のハムシ個体群の飼育系統から成虫を100個体ずつ放飼した。その際、若葉への強い摂食選好性を持つ系統と選好性を持たない系統をそれぞれ単独で放飼した単一区と、50個体ずつで混合した混合区を設定した。ハムシの個体数、ヤナギの葉形質、他の節足動物群集の種と個体数をモニタリングした結果、葉形質の時間変化、ハムシの個体群動態、そして節足動物群集の種組成とその時間変化が、処理区によって有意に異なることが明らかになった。すなわち、4mm程度のハムシの適応形質における個体群内の遺伝子頻度の違いが、樹木全体レベルで葉の形質に影響を与えて節足動物群集の構造と動態を大きく変えたのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はRAD-seqによる分子解析と野外のメソコスムにおいて群集-進化フィードバックの操作実験を行うことが主に計画されていた。それぞれは年内に順調にすすみ、成果の一部について投稿論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
メソコスム実験を継続する。特に、変化した節足動物群集がハムシ個体群内の遺伝子頻度にフィードバックする影響を解明することを目指す。そのために、ゲノムワイド関連解析を完了させ、昨年から収集しているメソコスム内のハムシ個体群の時系列サンプルを今年度も蓄積させつつ、SNPによるジェノタイピングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
分子実験に必要な試薬や器具などの消耗品の購入を圧迫する可能性があったため海外出張をとりやめたことと年度末の国内学会旅費が計上されていないことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究遂行のための分子実験に必要な試薬や器具など消耗品の購入に充てる。
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