研究課題/領域番号 |
26840137
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
鈴木 紀之 立正大学, 環境科学研究所, 客員研究員 (00724965)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 繁殖干渉 / ニッチ分割 |
研究実績の概要 |
「同種精子優先のメカニズムは繁殖干渉の緩和に貢献しない」という仮説を検証するために、ナミテントウとクリサキテントウを用いて種間の交尾実験を行なった。同種精子優先があれば種間交尾のコストを軽減できるが、そもそも昆虫のメスは通常多回交尾を拒否する傾向があるため、初めに他種のオスと交尾してしまうと、その次に同種のオスとの交尾機会があったとしてもそれを拒否してしまうためである。つまり、行動的な特性によって生理的なメカニズムの効果が消えてしまうと考えた。2種のテントウムシを野外(埼玉県熊谷市)で採集し、実験室内で産卵させ、未交尾の成虫(F1世代)を得た。これらを同種または他種と交尾する実験区に分け、ビデオカメラでその行動を観察した。その結果、種間の求愛と多回交尾のしやすさに種間差があることが確認された。これらの行動がベースとなり、両種が相互作用したときのコスト(繁殖干渉)に非対称性があることが予測された。これらの結果は、先行研究の結論(Noriyuki et al. 2012 Journal of Animal Ecology)を補強するものである。同種精子優先や生殖隔離の研究では、一般に「交尾できるかどうか」や「雑種の適応度」といった「目に見える」現象が着目されていた。その一方で、本研究は行動レベルの特性が種間の動態を決めうることを示唆しており、これまでの研究プログラムに再考を迫るものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近の関連研究の増加により、動物の同種精子優先および植物の同種花粉優先(合わせて同種配偶子優先)に関する原著論文のリサーチが完了しておらず、メタ解析による普遍性のチェックが終わっていない。ただし、当初予定していた行動実験については平成26年度と合わせて十分な量のデータを得ることができた。これにより、さまざまな統計解析ができるようになった。また、国際学会における発表はまだ完了していない。国際昆虫学会議などにおける発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果はテントウムシだけでなく、他の動物にも応用可能である。また、植物における同種花粉優先にも応用できる。すなわち、これらの先行研究において同種配偶子優先とニッチ分割(もしくは地理分布)を改めて調べてみることにより、「同種配偶子優先が繁殖干渉のコストを緩和しない」という仮説の普遍性をチェックすることができる。これらの成果を国際学会(国際昆虫学会議など)にて発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年9月にフロリダで開催される国際昆虫学会議において繁殖干渉についてのシンポジウムを企画したため、本研究の成果を発表する必要がある。また、一部のメタ解析を継続してデータを補強するため。
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次年度使用額の使用計画 |
フロリダで開催される国際昆虫学会議の参加費と旅費に使用する。また、メタ解析に必要な文献を収集する。
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