研究課題/領域番号 |
26840138
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
曽我部 篤 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (80512714)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トランスクリプトーム / 魚類 / 配偶システム / 一夫一妻 / 行動生態 / 繁殖生態 / 多様性 / RNA-Seq |
研究実績の概要 |
本研究では、配偶システムに著しい多様性が認められ、なかでも他に類を見ないほど安定した一夫一妻を維持することが知られるヨウジウオ科魚類をモデル系として、一夫一妻維持の至近的機構とその遺伝基盤の解明を目指す。社会行動の制御に重要な役割を果たすと考えられる神経内分泌系に着目し、配偶システムの異なる4種のヨウジウオ科魚類を対象に脳内の遺伝子発現パターンを比較することで、配偶システムタイプ間で発現パターンの異なる遺伝子をペアボンド維持に関わる候補遺伝子としてリストアップし、行動実験を通じてその機能を検証する。 初年度である26年度は、配偶システムタイプ間の脳内遺伝子発現パターンの違いを明らかにするため、一夫一妻のヨウジウオ科魚類1種(イシヨウジ)と複婚の2種(ヨウジウオとオクヨウジ)について、野外調査および水槽飼育実験により、交配後一定日数経過した繁殖雌雄の脳を採取し、比較トランスクリプトーム解析用の試料とした。一夫一妻の1種(Hippocampus abdominalis)は交配に至らなかったため、現在も飼育実験を継続している。比較トランスクリプトーム解析における効率的なマッピングのため、イシヨウジの全脳を試料にMi-SeqによるロングリードのRNA-Seqを行ない、リファレンス配列を作成した結果、約4000万リードからデ・ノボアセンブリによりおよそ18万のコンティグが得られた。これらについて現在アノテーションを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リファレンス配列の作成に想定外の時間を要したことに加え、供試魚1種の交配実験が予定通りに進まなかったため、当初26年度中に実施予定であったヨウジウオ科魚類4種の脳の比較トランスクリプトーム解析を27年度に実施することとした。既に3種の試料は得られており、残り1種についても採取のめどが立ったため、リファレンス配列作成が完了次第すみやかに本解析を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
脳内発現遺伝子の比較トランスクリプトーム解析を早期に実施し、配偶システムタイプ間で発現量に変異のある遺伝子の特定を目指す。あわせて発現の脳内空間パターンの異なる遺伝子をin situハイブリダイゼーション法により探索するが、対象種を一夫一妻のイシヨウジと複婚のヨウジウオにしぼり、効率的に分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初26年度中に実施予定であったRNA-Seq受託解析を、研究の遅れにより27年度中の実施に変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初26年度中に実施予定であった比較トランスクリプトーム受託解析は、前年度繰越分にて本年度実施する。また、研究計画に沿って、脳内遺伝子発現部位比較によるペアボンド維持関連遺伝子探索と候補遺伝子のペアボンド維持機能に関する行動実験のため、以下の項目に研究費を使用する予定である。1.脳内遺伝子発現部位比較試料の採取のための調査旅費、2.in situハイブリダイゼーション試薬類の購入費、3.行動実験のための調査旅費、飼育実験のための消耗品・試薬類の購入費。
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