| 研究課題/領域番号 |
26840148
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| 研究機関 | 立命館大学 |
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研究代表者 |
荒木 希和子 立命館大学, 生命科学部, 助教 (30580930)
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| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | クローナル植物 / エピジェネティック変異 / 野生植物 / DNAメチル化 / 生育環境 / 環境応答 |
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| 研究実績の概要 |
エピジェネティック変異は，遺伝的変異や生育環境の影響を受けて遺伝子発現に作用し，表現形質にも変化をもたらす．特に植物のクローン繁殖によって生産されるクローン株は遺伝的変異を伴わないため，これらの生存においてエピジェネティック変異が野外での変動環境への迅速な応答メカニズムとして重要な役割を果たしていることが考えられる．またクローン繁殖（体細胞由来）の個体と種子繁殖（生殖細胞由来）による個体では，エピジェネティック状態の継承の程度やメカニズムが異なることが推測される．そこで本研究は「クローナル植物の繁殖戦略におけるエピジェネティックス機構の解明」を目的として，栽培実験と分子生物学的実験を行っている．
そこで，光強度の異なる環境下（明・暗）で栽培したアブラナ科ハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri)のクローン株のバイサルファイトシーケンス解析を試みた．その結果，DNAメチル化はクローン株間で類似しており，野外の光環境ではDNAメチル化状態が大きく変化しないことが明らかとなった．詳細な変化を特定するため，変異が見られたいくつかの遺伝子領域について詳しい解析を進めている．
そして，様々な環境要因の影響に対するエピジェネティックな変化とそれらが２つの繁殖様式（クローン繁殖・種子繁殖）を介した時の継承の違いを調べるため，(1)光環境の異なる条件，(2)異なる性質の土壌（石灰岩性・非石灰岩性）でのハクサンハタザオ，および(3)水分環境の異なる土壌（乾燥・湿潤）でのCardamine flexuosaおよびCardamine amaraのクローン株の栽培を行っている．これらの植物のクローン株を特定の環境で継代し，成長の記録とメチル化分析に用いる葉のサンプリングを行っている．サンプリングした葉はDNAメチル化の分析や遺伝子発現分析に供し，エピジェネティック変異の特定を行っていく予定である．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野外環境下での光環境応答に関する栽培実験はすでに完了し，代表的なサンプルのバイサルファイトシーケンスを行い，メチル化解析を行った．その結果，この条件のクローン株間ではDNAメチル化変異があまり顕著ではなかったため，分析に供するサンプルの再検討を行った．しかし，計画当初に比べて分析費用が安価になったことから，分析サンプルを選定するのではなく分析サンプル数を増やすこととした．
土壌条件に関する栽培実験では，種子の発芽が困難であることが課題であったが，栽培条件を改良して十分な植物が栽培できたため，これらのサンプルも分析対象とした．またC. flexosaとC. amaraもゲノム解析が完了している株を譲渡してもらい，その株の継代が進んだため分析対象とした．これらのサンプルを含めて，本年度は12サンプルをバイサルファイトライブラリ作製に供した．
しかし，実験はライブラリ作製までにとどまっており，予定していた解析が完了していない．シーケンス分析およびデータ解析を引き続き行い，研究を完了させる必要がある．
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| 今後の研究の推進方策 |
・すでに分析を終えているデータをより詳細に解析し，その傾向についてのまとめを行う．
・栽培しているハクサンハタザオの同一親のクローン株と種子株のバイサルファイトシーケンスを行い，繁殖様式によるエピジェネティック変異の程度を解析する．計画では，室内での栽培株のみを実験に供す予定であったが，既存のバイサルファイトシーケンスのデータを有効に利用するために，以前の実験に用いたクローン株および対照クローン株も分析することとした．
・C. flexuosaとC. amaraも継代栽培が順調に進んだため，当初の計画に加えてこれらも分析の対象とすることとした．これらの種はゲノム配列を決定した株を譲渡してもらったため，メチル化解析はその情報をもとに効率よく行う予定である．また遺伝情報をもとにプライマーの設計などを行い、遺伝子発現解析も試みる．
・ライブラリ作製を行ったサンプルはさらに解析が必要であるが、シーケンス解析は委託として依頼し、データ解析はこれまでの解析に続いて共同研究として進める予定である．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
産休に入り当初の計画を完了できなかったため、分析とデータ解析を翌年度に延長する必要が生じた。
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| 次年度使用額の使用計画 |
シーケンスの補助およびデータ解析に関する物品購入に使用予定である。
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