研究課題/領域番号 |
26840150
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
保坂 哲朗 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (50626190)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 熱帯雨林 / 生物間相互作用 / 生物多様性 / 国際情報交換 / マレーシア / シンガポール |
研究実績の概要 |
本研究は、フタバガキ科(Dipeterocarpaceae)樹木をはじめとする東南アジア熱帯雨林構成樹種の種子食性昆虫相や寄主利用様式を、DNAバーコーディングを用いて網羅的に明らかにすると共に、本地域における植物―種子食性昆虫の共種分化の過程から、それらの相互作用系を解明することを目的とする。 平成26年度は主に研究サンプルの収集を行った。マレーシアなどの低地熱帯雨林においては、主要な樹種の多くが数年に一度しか開花しないことが知られており、サンプルの収集にはある程度時間がかかることが予想された。しかしながら、幸運なことに調査地の一つである半島マレーシアのパソ森林保護区において、多くの樹種が同調して開花結実する「大規模一斉開花」が3月から5月に起こり、フタバガキ科、アオイ科(Malvaceae)、マメ科(Fabaceae)など18科72種の樹木から11,000個の果実を採集することができた。これらの種子は、実験室内で保管し、種子内部で発育する種子食性昆虫が成虫になるまで飼育し、羽化脱出した成虫を採集した。種子食性昆虫の多くは、ハマキガ科(Tortricidae)やメイガ科(Pyralidae)の小蛾類、およびホソクチゾウムシ科(Nanophyidae)やゾウムシ科(Curculionidae)、ヒゲナガゾウムシ科(Anthribidae)のゾウムシ類であった。これらのゾウムシ類と小蛾類については、形態とDNAバーコーディングの両方による種同定を進めている。また、ボルネオ島ランビル国立公園の協力研究者からも種子食性昆虫のサンプルをご提供頂いており、今後はこれらのサンプルも含め、種子食昆虫のDNA情報の蓄積と系統樹の作成を網羅的に進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該地域においては、植物の種子生産が低頻度かつ不定期であるため、種子や種子食性昆虫のサンプリングには通常時間がかかるが、幸運にも大規模な開花・結実が研究の開始年に起こったため、多くのサンプルを短期間に得ることができた。調査許可や現地の調査体制についても準備を整えることができた。さらに、他地域の研究者との連携も順調で、他地域のサンプルも含めた網羅的な調査ができている。これらのサンプルの同定作業やDNA情報の蓄積も順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度同様、計画に沿って研究を進める。特に、1年目に種子食性昆虫のサンプルが得られなかった樹種について、重点的に種子食性昆虫のサンプル収集を行いたい。また、すでに得られたサンプルについては、形態の分析とDNA解析の両方による種同定を完了させる。そして、これらの情報をもとに、各昆虫の系統関係の解明のほか、寄主幅や寄主利用の変遷を明らかにし、植物の種分化が種子食性昆虫の種分化に与えた影響について明らかにする。
|