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2016 年度 実施状況報告書

DNAバーコードを用いた東南アジア熱帯雨林の植物―種子食性昆虫の相互作用系の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26840150
研究機関首都大学東京

研究代表者

保坂 哲朗  首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特任准教授 (50626190)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード植物-動物相互作用 / 熱帯雨林 / 一斉開花 / マレーシア / フェノロジー
研究実績の概要

マレーシアなどの東南アジア低地熱帯雨林の骨格を形成するフタバガキ科樹木は、数年に一度多種が一斉に開花・結実する「一斉開花現象」で知られている。本研究は、フタバガキ科をはじめとする東南アジア熱帯雨林構成樹種の種子食性昆虫相や寄主利用様式を、DNAバーコーディングを用いて網羅的に明らかにすると共に、本地域における植物―種子食性昆虫の共種分化の過程を明らかにし、その相互作用系の解明を目的とする。
平成28年度はこれまでに得られたフタバガキ科種子食ゾウムシのDNA(COIと16S領域)解析を行い、概ね解析を終えることができた。これにより、フタバガキ科の種子食ゾウムシは、ゾウムシ科とホソクチゾウムシ科の大きく二つのグループに分けられることが分かった。また、これらのゾウムシには、種子とともに地表に落下してから数週間以内に羽化脱出するものがある一方で、地表落下後、土壌中で幼虫のまま休眠し、半年から1年以上かけてバラバラのタイミングで成虫になるものがあることが分かった。休眠幼虫の25%は少なくとも30か月間土壌中で生存できることが確認された。このような長い幼虫休眠は、稀で不定期なフタバガキ科の種子生産に適応したゾウムシの生存戦略であると考えられる。これらの休眠する幼虫はDNA解析の結果、1つの分類グループに属し、ゾウムシ科よりもホソクチゾウムシ科に近い仲間であることが示唆されたが、今後成虫サンプルに基づき、より確かな種同定を行う必要がある。一方、広範な非フタバガキ科(31科79種)を対象とした種子食昆虫調査を行ったものの、フタバガキ科の種子食昆虫は全く発見されなかった。したがって、フタバガキ科の種子食昆虫が一斉開花期以外の時期に非フタバガキ科の寄主を利用していることは考えにくく、幼虫休眠しないグループも成虫休眠など何かしらの方法で長い非結実期を生存していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該地域においては、植物の種子生産が低頻度かつ不定期であるため、種子や種子食性昆虫のサンプリングは通常難しいが、幸運にも大規模な開花・結実が研究の開始年に起こったため、多くのサンプルを得ることができた。今年度は、昨年度までに収集したゾウムシサンプルのDNA解析を概ね終わらせることができ、今後の系統解析や寄主幅の解析に必要な基礎データを得ることができた。また、研究開始年に収集したゾウムシの幼虫を長期間飼育することで、これらの羽化時期や生存可能期間を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

研究はおおむね計画通りに進捗しているので、来年度も計画に沿って研究を行う。まず、成虫の形態情報およびDNA情報を用いて、幼虫休眠するゾウムシ群の同定を行う。また、これまでに収集したフタバガキ科を中心とした樹種の種子食昆虫のDNA情報に基づいて、これらの昆虫の寄主幅や系統関係の解析を行う。特に、寄主植物の系統樹と比較解析し、共種分化の有無など、種子食昆虫の寄主利用様式について進化生物学的観点から検討を行う。今年は最終年度であるので、これらの結果を取りまとめ、学会や学術誌で発表を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [国際共同研究] マレーシア森林研究所(マレーシア)

    • 国名
      マレーシア
    • 外国機関名
      マレーシア森林研究所
  • [国際共同研究] 東華大学(台湾)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      東華大学
  • [国際共同研究] スミソニアン熱帯林研究所(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      スミソニアン熱帯林研究所
  • [雑誌論文] Responses of pre-dispersal seed predators to sequential flowering of dipterocarps in Malaysia2016

    • 著者名/発表者名
      Hosaka, T., Yumoto, T., Chen, Y. Y., Sun, I. F., Wright, S. J., Numata, S., Noor, N. S. M.
    • 雑誌名

      Biotropica

      巻: 49 ページ: 177-185

    • DOI

      10.1111/btp.12371

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] フタバガキ科の種子は食われやすいか?熱帯雨林103樹種の虫害率比較2017

    • 著者名/発表者名
      保坂哲朗
    • 学会等名
      第64回日本生態学会
    • 発表場所
      早稲田大学(東京都新宿区)
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-18
  • [学会発表] Frequencies of insect seed predators on dipterocarps and non-dipterocarps: an implication for predator satiation hypothesis2016

    • 著者名/発表者名
      Tetsuro Hosaka
    • 学会等名
      第26回日本熱帯生態学会
    • 発表場所
      筑波大学(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2016-06-17 – 2016-06-19

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-22  

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