研究課題/領域番号 |
26840151
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
風間 健太郎 名城大学, 農学部, 研究員 (60726842)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | キャリーオーバー効果 / 非繁殖期 / 繁殖投資 / 安定同位体 / 酸化ストレス / 栄養段階 / ジオロケータ |
研究実績の概要 |
本研究では、位置や行動が通年記録できる動物装着型の記録計(ジオロケータ)を用いてウミネコの非繁殖期の分布や採餌頻度を調べ、それらと繁殖直前の生理状態およびその後の繁殖行動との関連を明らかにする。非繁殖期から繁殖期へのキャリーオーバー効果を明らかにすることで、二つの時期をまたいだ動物の生活史形成の行動・生理学的なプロセスを解明する。 2年目である本年は、昨年に装着したジオロケータの回収、および回収個体の生理状態と繁殖投資量の測定を行った。昨年22個体に装着したジオロケータのうち、回収できたのは5個のみであった。回収率が低かった原因は、昨年度にウミネコが繁殖途中で営巣を一斉に放棄してしまったため、今年度の巣場所への帰還率が著しく低かったためと考えられた。回収に成功したジオロケータのデータを解析したところ、ほぼ全ての個体は秋期以降に日本海を南下し、冬期には沖縄近海あるいは韓国沿岸に滞在していた。ジオロケータ回収個体および別の25個体から血液を採取し、酸化ストレスレベルと安定同位体比を測定した。その結果、メスは血漿中の安定同位体比が高いほど血中抗酸化レベルが高いことが明らかとなった。また、抗酸化力が高いほど、体重あたりの合計卵体積が小さいことが明らかとなった。これらの結果は、ウミネコのメスは繁殖前の栄養段階が繁殖期の酸化ストレスレベルに関連し、それが繁殖投資量に影響することを示唆する。 本年は新たに15個体にジオロケータを装着し、次年度に回収する。今後、ジオロケータの回収個数を増やして冬期の環境利用データの解析をさらに進め、上記のキャリーオーバー効果が生じる行動学的なプロセスの解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に営巣地の一斉放棄が生じたため、ジオロケータの回収率が20%程度と著しく低かった。一方、昨年に製造メーカーから告知されたリコールの影響が懸念されたものの、回収されたジオロケータからはデータが問題なく取得でき、冬期の環境利用に関する最低限の解析は実施できた。また、個体の生理状態と繁殖投資の関係を解明するため、当初ジオロケータ回収個体のみから行う予定であった採血を、別の25個体からも実施した。さらに、ウミネコへの影響を軽減して繁殖放棄を防止するため、当初予定していたホルモン濃度ではなく、より少量の血液でも測定可能な酸化ストレスレベルを生理状態の指標として導入した。これら研究計画の柔軟な変更により、予想外の悪条件の中、非繁殖期から繁殖期へのキャリーオーバー効果の生理学的プロセスを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年および昨年度に装着したジオロケータの回収と血液採取を行う。ジオロケータの電池寿命は2年以上であるため、昨年度に装着したジオロケータも引き続き駆動している可能性が高い。ジオロケータの回収個数を増やして冬期の環境利用データの解析をさらに進め、キャリーオーバー効果が生じる行動学的なプロセスの解明を目指す。
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