本研究では、一部の昆虫が生涯で1種類の植物のみを食べる原因を明らかにすることを目的としている。生物同士の共生関係の中には、1種対1種の極めて高い特異性を示すものがいる。特に、昆虫の中には限られた植物だけを食べるものが多く知られているが、このような特異性は、植物が作り出す防衛形質(毒やかたさ)とそれを打破できるかどうかが重要であると考えられている。しかしながら、同じ植食性昆虫の中でも、花粉を運ぶことで植物と相利共生関係を結ぶ昆虫においては、なぜ特定の植物しか食べないのか?についてはほとんど解明されていない。 そこで、本研究では、カンコノキとハナホソガの送粉共生系を題材として、1種対1種の高い種特異性がもたらされる原因の解明を目指す。 本年度(平成26年4月1日から平成27年3月31日)は、(1)室内実験系の確立および (2)ハナホソガの寄主認識メカニズムの解明の2つを軸に実験を行った。まず、ハナホソガを寄主植物以外で飼育することを目指し、ハナホソガの室内における飼育および、植物の移植・栽培を行った。その結果、樹種によって移植成功の条件が異なることが明らかとなり、適した環境での栽培が可能になった。続いて、ハナホソガの寄主認識メカニズムを明らかにするため、ハンホソガの触角に様々な花の匂いを提示し、電位反応を検出することで、キーとなる匂い物質の選別を行った。その結果、匂い物質の中でもごく一部の匂い物質だけを用いて寄主を認識していることが明らかになった。
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